不動産業界で使用される用語は特殊です。
そもそも日本の不動産業界はクローズドな世界と言われています。
(最近、「不動産テック」という言葉をよく聞きますが、この不動産テックの定義上、そもそも、日本の不動産業界の悪しき商習慣が問題とされています。)
そのクローズドな不動産業界で使われている用語は様々で、いっぱいあります。
中には、同じ不動産業界の人でも、一瞬、「んっ?」となるような、特殊な用語、略語もあります。
ですから、不動産、不動産業界の知識のない人が、ゼロから、そのような用語を調べる、覚えたところで、時間の割には得るものは少ないです。
しかし、反対に、知らないと損をする可能性が高い用語というものも存在します。
この記事では、知らないと損する用語のみをピックアップしました。
1.国土交通省(国交省)
まず、知っておいた方がよいのは、
「国土交通省」
です。
略して、国交省(こっこうしょう)と言うこともあります。
なぜ、国交省を知っておくべきなのか、というと、不動産に関係する統計データや資料などが、ホームページなどで公開されているからです。
例えば、日本全国の土地価格の目安として利用されている地価公示や、不動産の売買情報を検索システムなどが利用できます。
また、マンションの大規模修繕の費用の目安などに対する調査結果も公表されています。
国土交通省:「マンション大規模修繕工事に関する実態調査を初めて実施 ~工事を発注しようとする管理組合等が適正な見積りかどうか検討する際の指標となります~」
他にも、建物の建築費に関する統計データなども公表しています。
このように、国土交通省は、不動産関連の情報を調べるために、知っておくべき用語(?)なのです。
国土交通省は、不動産仲介会社やマンション管理会社、建設会社などの免許権者でもあり、監督処分を行ったりもしています。
2.一物四価
次は「一物四価」です。(いちぶつよんか、と読みます。)
簡単に言うと、不動産のうち、土地の価格には、4種類の目安となる情報が公開されている、ということです。
よく「不動産には4種類の価格がある。」と解説されたサイトも見ますが、それは間違いです。
あくまで、「土地」の価格に対する公開情報です。
なぜ、知っておくべきか、というと、一戸建やマンションなど、自宅として使っている不動産を売却したい、購入したい、という時に、
自分である程度の価格を計算できるからです。
それにより、不動産業者の言っている価格や、AIで出された価格などが、どれくらい信用できるか、確かめることができます。
特に「路線価」というのは面白いです。
ある道路に接している土地の価格がいくらか、という情報が公開されていて、自分で計算することができます。
ただし、そのまま計算すると、安めに出るので、自分で計算する際は注意が必要です。
3.仲介手数料
次は仲介手数料です。
「仲介手数料」とは、不動産を売買・賃貸する際に不動産仲介業者に対して支払う手数料です。
仲介手数料は成功報酬に分類されます。
そのため、契約が成立しなかった場合には支払う必要はありません。
また、仲介手数料には、上限の金額が法律で決められています。
(例えば、売買価格の3%+6万円、などです。)
不動産売買を不動産業者を通じて行う場合、この仲介手数料が発生することを忘れないでください。
(バカにならない金額です。)
また、あくまで売買や賃貸が「成立」した時に発生することも忘れないでください。
(交渉途中でボツになった場合、仲介手数料は発生しません。)
さらに、次の項目で説明する「買取」によって不動産を売却する場合は、仲介手数料は発生しません。
(買取の明細に仲介手数料が入っているのはおかしいことです。)
4.仲介と買取
次に仲介と買取についてです。
これはどちらも、不動産業者に対して、不動産の売却をお願いする形になります。
簡単な違いは、
仲介の場合は、仲介手数料がかかります。
ですから、不動産の売却価格から、仲介手数料が差し引かれた分が、自分の手元に残るお金になります。
一方で、買取は、不動産業者が直接買い取るため、仲介手数料は発生しません。
その代わり、仲介に比べて、少し安い価格が買取価格となる傾向があります。
先ほども言った通り、買取の場合には仲介手数料は発生しません。
5.坪と㎡
「坪」と「㎡」はどちらも不動産の広さを表す用語です。
広さというのは平面、2Dの広さ、つまり面積です。
(立体、3D、体積といったものではありません。)
「㎡」(ヘイベイ、平米、平方メートル)とは、縦 1m(メートル)、横 1mの正方形の面積です。
大体、ワンルームマンションでは1室が20~30㎡、ファミリータイプの分譲マンションでは1室が70㎡、という広さが一般的です。
「坪」とは、日本独自の不動産の面積表示です。
年配の方は「㎡」よりも、「坪」をよく使います。
1坪は約3.3㎡です。
1㎡は約0.3025坪です。
ここで注意しなければならないのは、
土地やマンションの広さを調べる、聞く時に、
その単位が「㎡」なのか、「坪」なのかを必ず確認するようにしましょう。
なぜなら、「1㎡」と「1坪」を比べた時、どちらが大きいかといえば、
「1坪」の方が、約3倍大きいからです。
特に土地の物件情報を調べる時は要注意です。
6.単価
不動産に関連する用語で、知っておくと損しない次の用語は、
「単価」
です。
この「単価」は、不動産業界で非常によく使う用語にも関わらず、不動産業界以外ではあまり使われないようです。そのため、どのように使うのか、計算するのか、ということを知らない人が多いようです。
結論から言うと、「単価」を使うことで、
その不動産の価格や賃料が
高いのか
安いのか
が分かります。
逆に言うと、販売チラシなどの「3,500万円から」などの表現では、その価格が高いのか、安いのかを正確に分析することが出来ません。
ですから、この「単価」は不動産に少しでも関わろうとしている人にとっては、
必ず知っておかなければならない用語
です。
例えば、あなたの家の隣に、マンションが建っているとして、2つの部屋が販売されているところを想像してください。
1部屋目は5,000万円です。
2部屋目は4,000万円です。
どちらが高いですか?
5,000万円の方が高い、と思った人は気を付けてください。
なぜなら、先ほど説明した「㎡」もしくは「坪」、つまり面積の情報がまだ分からないからです。
では、面積の情報を加えます。
1部屋目は5,000万円です。部屋の広さは80㎡です。
2部屋目は4,000万円です。部屋の広さは50㎡です。
どちらが高いですか?
なんとなく5,000万円の方が高い、と思った人は気を付けてください。損します。
「なんとなく」ではなく、「正確に」高いのはどちらかを判断することが出来るからです。
5,000万円、4,000万円をそれぞれ80㎡、50㎡で割った数字を記載します。
(これが「㎡」の単価、であり、「㎡単価」という言い方をします。)
1部屋目は5,000万円です。部屋の広さは80㎡です。㎡単価は62万5千円です。
2部屋目は4,000万円です。部屋の広さは50㎡です。㎡単価は80万円です。
どちらが高いですか?
㎡単価で比べると、5,000万円の部屋の62.5万円(1㎡当りの単価、「62.5万円/㎡」とも表されます。)よりも、4,000万円の部屋の80万円/㎡の方が断然高いことが、明らかに分かります。
特にマンションや土地の物件情報を調べている人は、
必ず「単価」で比較する癖をつけるようにしてください。
(ちなみに、価格や賃料を「坪」で割ると、「坪単価」と呼ばれる単価になります。)
7.グロスとネット
不動産の業界でも、「グロス」と「ネット」という用語は使われます。
よく使うものとしては、「面積」と「利回り」です。
グロスとは総額、総計、という意味で、
ネットは、グロスから余分な部分を差し引いた正味の部分です。
使用する際の注意点としては、グロスとネットの大小関係です。
グロス面積はネット面積よりも大きく、
グロス利回りはネット利回りよりも大きくなります。
この大小関係は正確に間違えないように注意しましょう。
8.ハザードマップ
ハザードマップとは、
ハザードマップとは、災害における被害を最小限にくい止めることを目的として予想される災害の程度や対応方法等を図面等に表示するとともに、浸水情報、避難情報等の各種情報を分かりやすく図面等に表示したものを指します。
(出典:河川用語解説集)
と説明されています。
重要なのは、最近、日本では水害が多いですが、その被害範囲が、このハザードマップに正確に表現されている、と言われていることです。
少し大げさに被害範囲が記載されている印象を、以前は持っている人もいたと思いますが、
今後、土地やマンション(特に低層階)の購入を考えている人は、
必ずこのハザードマップを確認しましょう。
(不動産業者に問い合わせれば確認できます。)
9.まとめ
冒頭でも説明した通り、不動産業界における特有の用語は数多いです。
そして、必ずしも、その用語を全て知っておくことは必要ありません。
しかし、この記事で説明した用語については、
「知っていなければ損をする」
と思っていただいて間違いありません。
損をする、とはシンプルに、余計なお金を払ってしまう、または本来もらえるはずのお金を見逃してしまう、ということです。
不動産は高額です。
不動産業者に全てをゆだねるのではなく、自分自身でも判断を行い、騙されたり、知らぬ間に損をしていることがないよう、必要最低限の知識は付けておくことです。