公示価格に路線価、たまに公示地価と言ったり………不動産に関するサイトを見ると「一物四価」なんて言葉も目にします。
こんがらがらないように、これらについて、まとめてみました。
1.まず、一物四価の特徴と間違った「一物四価」の例
結論から先に言いますと、
「一物四価」とは、
「土地」の
「価格」に関する
「目的」に応じた
「4種類」の
「指標」のこと
です。
「指標」とは、目じるし、という意味です。
(出典:デジタル大辞典)
「一物四価」の具体的な内容を確認する前に、
まず、一物四価の特徴をまとめた表を見て下さい。
次に、間違った使用例を見て下さい。
正しく理解するためには、間違った表現を確認することも有用です。
(間違って使うと恥ずかしいだけではなく、誤った判断に繋がりますので注意して下さい。)
2.公示地価とは?
「地価公示」で公表される価格(「公示地価」といいます。)は、国土交通省が公示する土地価格の指標です。
毎年1月1日時点の価格が、その年の3月に公表されます。
「公示地価」は、
いわゆる「時価」
と考えられます。
商品などのその時々の市場価格。
(出典:大辞林第三版)
公示地価は国土交通省のホームページなどで見ることができます。
あくまで「土地」の価格のため、建物価格は含まれません。
また、公示地価は「都市計画区域」という区域(分かりやすくいうと、「山以外」です。)の中で、基本的には毎年同じポイントで定点観測されるものです。
ですから、この後説明する基準地価のように、森林の土地についての価格は含まれません。
3.基準地価とは?
「都道府県地価調査」で公表される価格を「基準地価」といいます。
基準地価は、都道府県が公示する土地価格の指標です。
「公示地価」と同じく、「土地」の価格のため、建物価格は含まれません。
毎年7月1日時点の価格が、その年の10月に公表されます。
(公示地価は1月1日、基準地価は7月1日時点の土地の価格です。)
公示地価と大きく違うところは、都市計画区域の範囲外にも、定点観測するポイントがあることです。
つまり山の中の価格も、基準地価では分かる、ということです。
(公示地価は都市計画区域「内」です。)
具体的に言うと、基準地価には「林地」の価格が分かるポイントがあります。
(公示地価には「林地」はありません。)
また、公示地価は年初に1年に1回の発表のため、その年の年末の価格とはズレが生じる、とも言われています。
この弱点を基準地価は補完することができます。
具体的には、公示地価と基準地価で全く同じ場所があるため、半年ずつの地価が確認できるわけです。
基準地価も、公示地価と同じく、国土交通省のホームページなどで見ることができます。
4.相続税路線価とは?
相続税路線価とは毎年7月頃に国税庁から公表される土地価格の指標です。
公表は7月ですが、年の始めである1月1日時点の土地価格です。
地価公示による「公示地価」の8割の水準です。
(つまり、時価の80%です。地価公示については、後で説明しています。)
主に市街地を中心とした道路に面する土地の、1㎡あたりの単価で表示されています。
(千円単位です。)
路線価は、土地を相続又は贈与した場合に、税金を計算するための重要な指標です。
そのため、
公示地価
基準地価
不動産鑑定士の鑑定評価
などを細かく調べたうえで決定されています。
相談税路線価は、国税庁のホームページなどで見ることができます。
5.固定資産税評価額とは?
東京23区は東京都から、それ以外は各市町村から公表されます。
3年ごとに、公表される年の1年前の1月1日時点の土地価格です。
固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税、不動産取得税や登録免許税といった、不動産関連の各種税金を決める際の基準となる評価額で、とても重要なものです。
固定資産税評価額は、土地や建物などの評価マニュアルである「固定資産評価基準」に基づいて、各市町村(東京の場合は23区)が決定する評価額のことをいいます。
土地であれば、地価公示による「公示地価」の7割の水準です。(つまり、時価の70%です。)
実は「一物四価」のうち、固定資産税評価額だけ「建物価格」があります。
ただ、固定資産税評価額の目的が税金の計算、というだけあって、この建物評価額は、安めの新築価格からスタートして、築何十年後には本来ゼロ円になる建物でも、新築価格の20%までしか下がらない(つまり、ゼロ円にならない)ような仕組みとなっています。
つまり、建物の固定資産税評価額から「時価」を推定することは難しい、ということです。
また、固定資産税評価額は、「路線価」から計算されます。
この路線価は、「標準宅地」というポイント(公示地価や基準地価などと同じイメージです。)の価格を基に付けられます。
この「標準宅地」は、不動産鑑定士による鑑定評価額の約70%をもとに決められます。
6.実勢価格とは?
冒頭にも引用しましたが、「時価」の定義です。
商品などのその時々の市場価格。
(出典:大辞林第三版)
また、「実勢価格」の定義です。
公示価格や企業の希望小売価格などに対し、実際に市場で取引される価格。
(出典:精選版 日本国語大辞典)
つまり、「一物四価」と言われる土地に関する公的指標と、「実勢価格」との違いは、
希望小売価格か、実際の売買価格か
ということです。
例えば、「公示地価」を求める際には、不動産鑑定士という専門家が、過去に実際に取引された価格を分析しており、理論的には「時価」の水準の価格になっています。
ただし、実際の不動産取引の場合は、絶対に「時価」(分かりやすく言うと希望小売価格です。)で売買されるわけではありません。
これは、不動産以外でもそうです。
例えば、500mlのペットボトルのジュースを買う時のことを想像して下さい。
不動産という大きな買い物に限らず、100円台のジュースでも、コンビニとスーパーとドラッグストアでは価格が違いますよね。
そして人によって、会社からの帰り道に寄ったコンビニで手軽に買いたいとか、少し家から離れているけど、一番安く売っているドラッグストアまで買いに行くとか、賞味期限に近いタイムセールで50%を狙いにいく、とか買い方は様々です。
でも、各商品には「定価」が付いています。
分かりやすいイメージとしては、「公示地価」などの公的指標は「定価」です。(または、希望小売価格です。)
ただ、「定価」を基にして、実際にいくらで買うか、売るかは、買主と売主が話し合って決めることです。
話し合いの結果、実際に売買される価格のことを「実勢価格」と言います。
7.まとめ
いかがでしたでしょうか。
何よりも「一物四価」について、イメージだけでも分かって頂けましたでしょうか。
「公示地価」と「基準地価」は、土地取引の指標、つまり目印・目安として使われるものです。
とはいえ、この公示地価や路線価などから導き出された「時価」は、本当に売れる価格なのでしょうか。
結論として、
ほとんどの場合には売れます
と言えます。
「ほとんどの場合」以外の例外については、こちらの記事を参考にしてみてください。
【簡単解説!】路線価で土地価格を計算するには?
また、土地についての「一物四価」の各指標を活用して、土地に関わるトラブルを事前に避けるようにしましょう。