不動産に関連することを調べていくと、普段は使わないような用語と出くわすことがあります。
「グロス」という言葉を知っていますか?
ビジネスで使っている人は分かると思いますが、全く聞いたことがない人もいるはずです。
「グロス」という用語は、不動産との関係ではどのように使われるのでしょうか。
先に大事なことを言うと、
「グロス」よりも「ネット」の方が小さい
です。
これを逆に覚えると、大変なことになりますので注意して下さい。
目次
1.まずは「グロス」のイメージを!セットで「ネット」のイメージも!
不動産で使用されるグロスの意味を考える前に、
まず、「グロス」のイメージを抑えた方が、理解しやすくなると思います。
まず、身近な例を考えてみると、「税込価格」と「税抜価格」があります。
100円の缶ジュース、消費税を10%とすると、
税抜価格は100円
税込価格は110円
(消費税は10円。100円×10%です。)
ここで、
税抜価格が「ネット」 (100円)
税込価格が「グロス」 (110円)
と覚えておいてください。
2.そもそもグロスとは?
そもそもグロスとは何か、を理解すれば、後は早く理解できます。
缶ジュースの税抜価格100円と税込価格110円を頭でイメージしながら、「グロス」の意味を調べてみましょう。
一般的な意味として、「グロス」とは、
正味(ネット,net)ではなく,総計ないし総額のこと。
(出典:三省堂 大辞林 第三版)
この定義を一つ、理解すれば、不動産で使われるグロス関係の用語も早く理解できます。
ポイントは、
「総額」
「総計」
です。
缶ジュースに当てはめると、
消費税込みの総額としての110円
がグロス、ということです。
では、逆にネットとは何か?
3.ネットとは?グロスとネットの関係は?
先ほどの缶ジュースの例で考えると、
税抜価格の100円がネットになります。
それを頭に浮かべながら、ネットの意味を調べてみます。
「ネット」とは、
余分な部分を除いた、実際に意味のある部分。経費などを差し引いた純益。(中略)正味(しようみ)。
(出典:三省堂 大辞林 第三版)
とあります。
先ほどの缶ジュースの例で考えると、
総額、つまりグロスの税込価格110円のうち、
消費税10円を「余分な部分」と考えます。
(実際は余分、というわけではありませんが。)
税込価格110円(グロス)から、
消費税10円(余分な部分)
を除いた税抜価格100円が、「ネット」です。
もう一度まとめますと、
缶ジュースの
税込価格110円(グロス)
消費税10円(余分な部分)
税抜価格100円(ネット)
とまとめられます。
4.不動産でグロスが使われる場面とは?
では、不動産では、「グロス」を使う場合は、どのような時でしょうか。
簡単に場合分けすると、
①利回り
②面積
③支払額
という用語に付け足して、またはその意味に付け加えて、使う場合があります。
ここで注意です。
利回り、面積や支払額のそれぞれで使用する場合でも、グロスとネットの関係性を正確に理解しておきましょう。
なぜなら、
グロス > ネット
からです。
つまり、
グロス面積はネット面積よりも大きく (グロス面積 > ネット面積)
また、
グロスの支払額はネットの支払額よりも大きいのです。(グロス > ネット)
ここを逆に理解していると、大変なことになってしまうので、くれぐれも注意しましょう。
5.グロス利回りとは?
では、グロス利回りとは何でしょうか。
そもそも「利回り」とは何か。
「利回り」を身近な例で例えると、
銀行の金利
だったり、
ポイントカードやクレジットカードのポイント
をイメージしてください。
つまり、何かの「利回り」は、
その何か(例えば銀行の口座に預けているお金)が、
どれくらいのお金を生んでくれるのかを、
%(パーセンテージ)で表したものです。
不動産の場合で使う利回りは、どれくらいの賃料(お金と考えてください)を生み出してくれるかの割合です。
分数で考えてみます。
利回り10%は、
\(\frac{10}{100}\)
と表されます。
ここでいう「10」は、
貸している人が借りた人から受け取る「賃料」
です。
では、分母に当たる「100」は何か。
これは、
貸している人が不動産を買うために支払ったお金(投資したお金)
です。
では、不動産の利回りで
「ネット」
の利回りはどのように出すのか。
先ほどの通り、「ネット」とは、
「余分な部分」
です。
利回りにとって余分な部分、つまり賃料に含まれる余分な部分とは、
お金が出ていくこと
つまり、経費です。
そもそも、利回りとは、不動産投資でどれくらいのお金が、その不動産を貸している人に入ってくるかを表したものです。
不動産の経費は、貸主が受け取ったお金を減らしてしまう、と考えられます。
ここで、経費を「3」とします。
(この記事では説明しませんが、不動産投資では大体経費は30%程度になることが多いです。それ以上の経費の割合となった場合、もしかしたら無駄な経費が含まれているかもしれません。)
この場合、ネット利回りは、
賃料10から、余分な部分(経費)3を引いた7を、
不動産への投資額100で割って、
\(\frac{7}{100}\)
つまり、7%となります。
まとめると、
賃料を10、経費を3、不動産価格を100とすると、
グロス利回りは\(\frac{10}{100}\)で10%、
ネット利回りは10から3を引いた7を100で割って、\(\frac{7}{100}\)で7%
となります。
注意として、グロス利回りの方がネット利回りよりも大きい数字になります。
(逆に覚えないでください。)
6.グロス面積とは?
では、グロス面積とは何か。
面積とは、広さのことです。
部屋の広さ、店の広さ、土地の広さを面積で表す時、「㎡」(平方メートル、「ヘイベイ」と読みます。)を使います。
先ほどの通り、グロスは税込価格、ネットは余分な部分を除いた税抜価格と考えます。
面積で余分な部分とは、どこでしょうか。
これも、不動産投資と絡めて考えます。
利回りの例で言うと、貸している人に入ってこないお金を余分な部分として経費として、ネット利回りを計算していました。
ネット面積も同じように、貸している人に入ってくるお金と関係ない部分をグロス面積から差し引いて計算します。
それはどこか。
貸していない部分のことです。
(貸している部分はお金≒賃料が発生しますが、当然、貸していない部分からはお金は発生しません。)
例えば、マンションやアパートで考えると分かりやすいです。
貸している部分は、部屋、そのものです。
貸していない部分は、自分以外の人も通る廊下(共用廊下、と言います。)やエレベーターホールなどです。
グロス面積は、共用の廊下と貸している部屋を含めた面積
ネット面積は、純粋に賃料の対象となる貸している部屋の面積
ということです。
「㎡単価」や「坪単価」というものがあります。
これは、賃料の支払総額を、面積(㎡や坪)で割り、1㎡当りの賃料はいくら、という見方をするときに使われます。
(簡単に言うと、20㎡と30㎡の賃料は微妙に比べにくいですが、「1㎡」という単位で揃えると、比べやすくなります。)
単価は、分母が面積となります。
ですから、分母がより大きくなるグロス面積で割った方が、単価としては低くなります。
この単価を計算するとき、分母で使う面積が「グロス」なのか、「ネット」なのか、よく確かめないと、大変なことになります。
複数の選択肢を、わざわざ比較しやすいように㎡単価などに置き換えているのに、計算のもとになる面積のことを理解していなければ、正しい比較ができません。
何度も言いますが、
グロス面積の方が、ネット面積よりも大きくなります。
つまり、単価としては、グロス面積の方が小さくなります。
ここは逆に覚えてしまうと大変なことになりますので注意です。
7.まとめ
グロスとネット。
普段から使いなれている人であれば良いですが、あまり聞きなれていない人は気をつけて下さい。
不動産で使われる時、グロスとネットの大小関係を逆に理解している場合
間違った判断をしてしまいます。
それはつまり、お金を無駄にしてしまうことにつながります。
もう一度、グロスとネットの大小関係を「>」(不等式)で表します。
(口が大きく空いている方が、大きい、という意味です。3>1、100>70など。)
グロス利回り > ネット利回り
グロス面積 > ネット面積
不動産に限らず、グロスという言葉は、価格などの支払額の規模感に使われたりもします。
不動産で言えば、土地の坪単価は安いのに、土地の面積がとても大きいため、価格、つまり支払総額としては大きくなってしまうことを、
グロスが嵩む(かさむ)
と言うことがあります。
この場合は、ネットとの関係では使われません。
もし、ネットとの関係でグロスの概念を使用するとき、特に不動産の利回りと面積について使用するときは、その大小関係を間違えないようにすることが重要です。