実勢価格に市場価格、販売価格に一物四価・・・・・・
価格の名前が色々ありすぎて良くわからない、というのがほとんどの方のご意見かと思います。
この記事では、必要最低限の価格に整理して、土地価格の実勢価格の目安の調べ方、公示地価との関係を解説しています。
1.実勢価格の目安(「時価」)の調べ方
結論から先に説明します。
実勢価格の目安の調べ方は以下の2ステップです。
①路線価から土地の価格を計算する。
②周辺の公示地価のグラフを確認する。
よく、一括査定を利用したり、売り出し中の物件を調べたり、取引価格情報を調べる、という方法が紹介されていますが、それは少し高度な知識と判断が必要です。
そのような高度な調査をする前に、まず、上記①と②のステップは絶対に踏んでおきましょう。
つまり、一括査定の金額が高いのか安いのか、売り出し中の物件が高いのか安いのか、そういったことを判断するための基準として、自分でまずは「実勢価格」の目安、つまり「時価」を計算しておく必要があります。
後ほど説明しますが、簡単ですので、絶対に計算しておきましょう。
「不動産の知識もないし、分からない。」という方はもちろんいると思いますが、情報公開が進む昨今、「分からない。」と言っている人は確実に損します。
自分で出来る限りのことを調べた上で、専門家の協力を仰ぐのか、それとも自分だけで判断するのかを選択するのが、現代社会の立ち回り方です。
2.実勢価格の目安の調べ方 = 路線価から計算 + 近くの地価公示のグラフをチェック
実勢価格や、その他の価格の整理については後ほど説明するとして、
まず、具体的な「実勢価格の目安」の調べ方を解説します。
実勢価格の目安の調べ方は以下の2ステップです。
①路線価から土地の価格を計算する。
②周辺の公示地価のグラフを確認する。
ちなみに、公示地価に代表される地価の公的指標は、決して土地価格だけに関係する指標ではありません。
不動産鑑定士という専門家により、海外情勢や金利動向、投資環境の変化や建築費動向など、さまざまな経済的な分析がされたうえで、評価された地価の指標が「公示地価」です。
したがって、「公示地価」のトレンドを把握することは、用途ごとのマクロ的な経済動向も同時に把握することが可能なのです。
(つまり、「土地」だけでなく、もっと広い情報がつかめる、ということです。)
2-1.路線価から土地の価格を計算する
路線価から、土地の価格(時価)を計算する式です。
固定資産税路線価 ÷ 0.7 × 土地の面積
詳しい計算の仕方や、その際の注意点は、以下の記事で詳しく説明していますので、参考にして下さい。
例えば、サイトで調べた相続税路線価が、
1,000B
と記載されていて、
土地の面積が、
100平米
だったとすると、
1,000(千円/平米) × 100平米 ÷ 0.8 = 125,000,000円
1億2,500万円になります。
計算は以上です。
簡単ですよね。
また、もし固定資産税路線価だった場合は以下の計算式になります。(路線価と土地面積は同じ数字とします。)
1,000(千円/平米) × 100平米 ÷ 0.70 = 約143,000,000円
2-2.周辺の公示地価のグラフを確認する
では、次に調べたい土地価格の、トレンドを確認します。
そのためには、周辺の公示地価の過去からの地価変動のグラフを確認します。
①標準地・基準地検索システムへアクセスして、調べたい市町村を選択する。(ここでは、東京駅の周りを例として調べてみました。)
②調べたいポイントの一覧を出して、「地図で確認する」をクリック
③調べたいポイントを選択し、グラフを確認する。
このグラフを確認することで、過去からの地価変動が把握できます。
これを具体的な今後の予測に使用します。
(専門的にも非常に予測は難しいので、ここでは「上昇気味なのか」、「下降気味なのか」を確認する程度で良いと思います。もちろん「変化なし」というパターンもあります。)
このグラフを確認する時は、2つの点だけ、注意して下さい!
・用途の違いには注意しましょう!
地価公示には、主に「住宅地」、「商業地」、「工業地」などの用途分類があります。
一般に「商業地」は「住宅地」よりも価格水準が高く、地価変動の波を激しい傾向があるので、調べたい用途は間違えないようにして下さい。
(例えば、上記の例では「千代田5-21」と記載されていますが、このうち「5-」というのは「商業地」です。「工業地」の場合は「9-〇〇」という表記になり、「住宅地」の場合は「-〇〇」(ハイフンの前に数字が付かない)と表記されるルールになっています。)
・特殊な要因がある場合には注意
観光客急増や再開発による影響により、ピンポイントで激しく地価が変動しているポイントがあります。
調べ方は以下の記事の「2-2.地域別で見る時の注意点」で説明していますので、参考にして下さい。
2019年の地価公示では、「地方の住宅地も27年ぶり上昇」しましたが、実は不動産関係者の中では、そろそろ不動産市場も折り返し地点では、という声もあります。
ですから、不動産に関しては、マクロ的な動向分析だけではなく、地域ごとに異なる価格推移を確認することが重要です。
3.実勢価格の整理
それでは、用語の整理をします。
まず、サイトで「実勢価格」と検索すると、実に様々な定義などが氾濫しています。
実勢価格、時価、販売価格、市場価格などなど、様々な価格の種類があふれていますが、実際は非常にシンプルです。
以下の3点だけ、頭に入れておけば十分です。
公示地価 = 時価
時価 ≠ 実勢価格
実勢価格 = 売買価格
なお、「一物四価」などの土地の公的指標についても、ここで分かりやすく、数式で整理します。
また、販売価格やら、市場価格などの言い方も、合わせて整理します。
実際に使う言葉は、
「売買価格」
この2つで十分です。
それでは用語の整理です。
それぞれ「時価」と「実勢価格」と「≒」で結ばれている用語は、若干の意味の違いはあるけど、同じ意味、として整理しておいて下さい。
(無駄に用語が沢山あっても、思考の邪魔をするだけです。)
「時価」 = 公示地価 ≒ 市場価格、正常価格、参考価格、取引指標、定価、希望小売価格
「公示地価」 ≒ 基準地価、相続税路線価÷80%、固定資産税評価額÷70%
「実勢価格」 ≒ 売買価格、成約価格、売却価格、購入価格
それぞれの関係は以下の通りです。
(「≠」は、イコールでない、つまり違うもの、という意味です。)
「時価」 ≠ 「売買価格」
「売買価格」 ≠ 「売出価格」
最後に、
という式は成立します。(必ずではありませんが。)
なぜなら、例えば、数百億円や数千億円する土地などを売買する時は、通常は不動産鑑定士による鑑定評価額を取得し、その鑑定評価額を基準に売買が行われるからです。
間違っても、会社の経理担当の一人が算出した価格で、数千億円の売買がされている、という話は聞いたことがありません。
(もし、そのような話があれば、それは大変恐ろしいことです。)
4.売買価格とは何か?
売買価格は、売主が売りたい価格と、買主が買いたい価格がマッチした金額です。
つまり、これって、売主と買主の力関係によって変わるものです。
イメージしやすく、
「時価」をジュースなどの「定価」や「希望小売価格」と考えて下さい。
(「定価」とはジュースのメーカーが決める商品の価格です。)
24時間の駅から近いコンビニは高くても売れるから「希望小売価格」で売っている。
駅から遠いドラッグストアは、「希望小売価格」の2割引きで売っている。
この時、「売買価格」は、あなたが駅前コンビニか、ドラッグストアのどちらで買うかを選択することによって決まります。
つまり、
強気なコンビニ
もしくは
安売りのドラッグストア
という「売主側の事情」と、
高くてもサクっと買いたい
もしくは
ちょっと歩いても節約したい
という「買主側の事情」が、マッチした価格が「売買価格」なのです。
上記の場合には、コンビニでの売買価格の方が、ドラッグストアでの売買価格よりも高くなります。
不動産、土地についても、基本的には、同じ原理で「売買価格」が決まります。
そして、この「売買価格」こそが、「実勢価格」です。
5.では公示地価とは何か?
「売買価格」(つまり、「実勢価格」です。)は、買主と売主の事情によって変わります。
しかし、「定価」は変わりません。
この「定価」が、土地の「時価」のことだと思って下さい。
(非常に分かりやすく、単純化して言っています。決して最高額という意味ではありません。)
ジュースの「定価」を基本的にはメーカーが材料費や人件費などを計算して決めますが、不動産、とくに土地の「定価」って、誰が決めるのか?
売りたい人が「定価」を決めていたら、うなぎ登りに土地価格は急騰します。
逆に買いたい人が土地の「定価」を決めていたら、どんどん下がり続けるでしょう。
世の中の経済状況などを総合的に踏まえて、この「土地の定価」、すなわち「土地の時価」を決定できる権限を与えられている職業があります。
不動産鑑定士、という有資格者です。
「公示地価」とは、毎年1回、土地の価格の定点観測ポイントについて、不動産鑑定士が、様々なデータを分析して計算して判断して評価したものです。
つまり、「定価」という概念があまり馴染まない不動産業界にあって、高値や安値の判断をするために公表されている土地の「定価」、つまり「時価」が「公示地価」である、と言えます。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
サイト上、いろいろな言葉が氾濫していますが、
基本的には
「時価」 = 「公示地価」 ≠ 「実勢価格」
です。
実勢価格は、買主と売主の力関係などによって、価格のブレ幅が大きいものです。
(でも、逆に数千億円クラスの大型取引などは、「公示地価」ベースで売買されることがあります。むしろ、そちらの方が安心なのでしょう。)
つまり、もっとも大事なのは、実勢価格が、高い方と安い方の、どっちにブレているのかを判断できるようにすることです。
そのためには、「時価」を自分で調べることで、一括査定や売出中の不動産、さらには不動産の営業マンに対抗できるような準備をしておくことが必須です。