「簿価」は、不動産投資や売買を行う上では避けて通れない用語です。
簿価の意味や仕組みを知らずに不動産を売買すると、思わぬ損をしてしまう可能性があります。
この記事では、主に不動産売買時の簿価について、説明しています。
1.簿価とは何か?
簿価とは何でしょうか。
(出典:精選版 日本国語大辞典)
簡潔に言うと、不動産の簿価とは、
不動産の購入価格
です。
上の定義の中の、
帳簿
や
取得原価
は、会計で使う専門用語です。
分かりやすく言うと、
帳簿とは、いくらで売ったり、買ったりしたかを記録するものです。
取得原価とは、購入価格のことです。
ただし、厳密に言えば、購入価格だけではなく、運送費や手数料などの
付随費用
という出費も加えて計算します。
2.不動産の取得原価の付随費用とは?
では、不動産の簿価になる付随費用には何があるのでしょうか?
例えば、土地・建物の購入代金、建物の建築代金は付随費用ではなく、購入価格です。
一方で、購入するときにかかった仲介手数料や各種税金、リフォームなどの増改築にかかった費用、住宅ローンの利息などは付随費用になります。
簿価を計算するうえでは、土地・建物の購入価格に加え、これらの手数料などを含めます。
具体的な購入価格と付随費用には次のようなものがあります。
(1)土地・建物の購入代金
(2)建築代金
(3)購入時にかかった税金(登録免許税、不動産取得税、印紙税など)
(4)仲介手数料
(5)測量費
(6)整地費・建物の取り壊し費用など
(7)設備費
(8)改良費
(9)借入金の利子(条件あり)
3.買った価格と同じ価格で売っても、利益が出る理由
では、次に不動産を売る場合を考えます。
もし、不動産を売って利益が出た場合、その利益に対して税金がかかります。
不動産の簿価は、購入価格です。
売った価格というのは、成約価格です。(実勢価格、とも言います。「時価」の水準とは異なることもあります。)
関連記事:土地価格の実勢価格とは?時価や公示地価、売買価格との違いは?
不動産の価格は、毎年、上がったとか、下がったとか言われています。
ですから、例えば、10年前に買った不動産を今年売った場合、購入価格と売却価格が全く同じという可能性は少ないです。
ただ、仮に、3,000万円で購入して、売った価格も3,000万円だった場合を考えてみて下さい。
この場合、利益は出るでしょうか、出ないでしょうか。
実は、購入価格と売却価格が全く同じ価格であっても、利益が出ることがあります。
その理由は
減価償却
です。
減価償却とは、分かりやすく言うと、
毎年、築年数が古くなるにつれ、建物の「簿価」を減らしていくこと
です。
ですから、3,000万円で購入しても、時の経過につれ、減価償却されると、建物の簿価は減少し、2,000万円くらいになっているかもしれません。
そんな時に、3,000万円で売ると、1,000万円の利益が出てしまう、という訳です。
ちなみに、先ほど、売却価格は成約価格(実勢価格)と言いましたが、この辺りについては、次のリンクを参考にして下さい。
簿価は、時価ではないし、成約価格(実勢価格)でもありません。
また、売却価格は時価とも限りません。
4.売却損益の計算方法
では、具体的な売却損益の計算方法はどのように行うのでしょうか。
具体的な式は次の通りです。
売却損益 = 売却価格 – ( 簿価 + 譲渡費用 )
売却によっていくら儲かったか、または損したかは、
売却価格から簿価を引けばいいだけではありません。
売却するためにかかった費用である譲渡費用も控除する必要があります。
譲渡費用とは、具体例を挙げると、
不動産業者に支払う仲介手数料
測量費用
印紙代
リフォーム代
交通費
などの諸費用のことを言います。
このように売買損益を計算するためには、いくらで購入したかという購入価格が分かっていないといけません。
しかし、先祖代々受け継がれた土地や、随分昔に購入した不動産など、購入価格が分からない時があります。
そんな時は、
売却価格の5%を取得価格とみなすことができます。
(概算取得費、と言います。)
5.まとめ
いかがだったでしょうか。
不動産を売る時には、
簿価
による損益の計算をしなければなりません。
そして、もし、利益が出ていたら、税金を払う場合があります。
そのため、不動産の売却の際には、簿価についての知識が必要になります。
土地には一物四価と言われる公的指標がありますが、これに簿価や実勢価格を加えると更に複雑になります。
詳しくは次のリンクを参考にして頂きたいのですが、
簿価は時価ではない
簿価と時価は同じ価格推移はしない
ということを、覚えておいて下さい。
関連記事:土地価格には4つの価格?一物四価を正しく理解!【簡単解説】