不動産投資では
表面利回り
が有名な投資採算性の指標です。
では、
IRR
という指標はご存知ですか?
このIRRも、表面利回りと同様に、重要な投資採算性の指標なのです。
1.こういう物件はどうやって検討しますか?
IRRについて、質問から理解してみましょう。
早速ですが、質問です。
次のような投資用物件を買うべきか、買うべきでないか、あなたなら、どうしますか。
半分以上の部屋が空室の1棟の賃貸マンション。
ただ、3年後には大規模修繕、5年後には近くで新しい駅の開発が予定されています。
満室稼働を仮定して、表面利回りを計算し、どのくらいの収益率があるか、検討しますか?
ちなみに、表面利回りは、
満室稼働と仮定した場合の年間賃料 ÷ 売買価格
で求められるので、計算が簡単です。
問題なのは、
満室稼働を想定した場合の年間賃料
をどのように計算するか、です。
現在、入居中の部屋の賃料を参考にしますか?
でも、もしかしたら、現在、賃貸中の部屋の賃料水準が高いから、半分以上が空室となっているかもしれません。
一方で、数年後に予定されている大規模修繕や新しい駅が開発される影響はどのように反映させれば良いのでしょうか。
もしかしたら、現在の賃料水準では安すぎるかもしれません。
このように、空室が多かったり、今後数年愛のうちに周辺環境などに変化があることが分かっている場合などには、表面利回りの検討だけでは、投資するか否かの判断が難しい場合があります。
IRR(日本語では内部収益率と言います。)という指標は、このような場合に投資するか否かの判断を行うための判断指標として分かりやすいものです。
表面利回りだけでの検討が難しい時は、IRRを使用した分析を行いましょう。
2.IRRとは何か?
IRRとは、
「internal rate of return」の略で、
日本語では「内部収益率」と言います。
字の通り、収益率なので、不動産投資や株式投資などの利回りなどと、
いくら儲かるのか
という視点で比較できます。
IRRの意味を説明するよりも、どのような時に使うのかを例示した方が、理解しやすいと思います。
IRRは、
表面利回りの分析だけでは良く分からない時
に使います。
それは、どういう時かと言うと、
1年後、2年後、3年後………と、
毎年の収支が変わる場合です。
表面利回りでは、1年分の賃料収入を使いますので、
2年後、3年後………の収支分析はできません。
(厳密には、利回りに織り込む形で検討できるのですが、分かりづらいです。)
ところが、IRRの場合は、
1年後の収支
2年後の収支
3年後の収支………………
というように、毎年の収支の分析ができます。
つまり、
表面利回りは、
1年分の賃料収入 ÷ 不動産価格
であるのに対して、
IRRは、
複数期間の収益合計を1年分に修正した金額 ÷ 不動産価格
(厳密には数式は違いますが、考え方を分かりやすくするようにしています。)
3.IRRと表面利回りの違い 〜短期的な分析か?長期的な分析か?
では、IRRと表面利回りの具体的な違いは何でしょうか。
以下、その違いについて説明します。
先ほども言いましたが、表面利回りは、
1年分の賃料
を分析に使います。
(1年分の賃料収入 ÷ 不動産価格が表面利回りです。)
これに対して、IRRは、
1年後、2年後、3年後………
と毎年の収支を使います。
このように毎年の収支を分析した方が、より細かい分析なのでしょうが、やはり手間がかかります。
ですから、多くの場合、IRRでの分析は、
5年
若しくは
10年
という単位がほとんどです。
そのため、IRRは長期間ではなく、比較的短期間での分析に使用されます。
もし、収支が今後数十年、ほぼ固定化されている不動産があれば、IRRよりも、表面利回りなどの分析の方が向いています。
一方で、始めに例示しましたが、空室が多い不動産の場合、
その空室が
1年後で全て埋まるのか
3年後でようやく全て埋まるのか
というシナリオによって、毎年の収支は大きく変わります。
このような時は、表面利回りでの分析には反映が難しいので、IRRでの分析が向いている、と言えます。
4.表面利回りでは、毎年の収支分析はできないのか
では、表面利回りでは、毎年の収支分析は全く出来ないのでしょうか。
表面利回りでも、毎年の収支分析は可能です。
例えば、使用する賃料収入を、今後数年間の空室分のマイナスを反映させてみたり、空室分のマイナスを価格に反映させてみたり、または、空室リスクを利回りに乗っけてみたり………など、やり方は複数あります。
ただ、分かりづらいです。
IRRの場合は、
1年後、2年後、3年後………と毎年の収支(キャッシュフロー、と言います。)が数字で示されます。
ところが、表面利回りの場合は、1年分の賃料収入や利回りの中から、
空室のマイナス分
を読み取る必要があります。
そのため、表面利回りの場合は、賃料収入に空室のマイナス分を反映するよりも、利回りにリスクを乗っける方が、分かりやすいです。
(単純に、同じ賃料でも表面利回りに違いがあれば、利回りが高い方がリスクが高い、という見方をします。つまり、利回りが高い方が空室のマイナス分が多い、ということです。)
このように、表面利回りでも、毎年のキャッシュフロー分析は不可能ではありませんが、数字として示されるIRRによる分析の方が、より分かりやすいの言うまでもありません。
5.まとめ
いかがだったでしょうか。
IRRについて、理解が深まったでしょうか。
IRRの数式を見るよりも、具体的な分析方法を考えてみる方が、理解に繋がります。
IRRは、期間限定の収支指標です。
毎年の収支が数字で明示されるので、投資成果の指標としては分かりやすいが、売買検討時の指標としては、作成の手間が多いです。
もし、キャッシュフローのシナリオ変更等がなければ、表面利回りの方が、計算の手間も少なく使いやすいと思います。
IRRのメリットとデメリットを理解して、適時適切に使用できるようにしましょう。