分譲マンションを購入すれば、いずれは「大規模修繕」を経験することになります。
大規模修繕の頻度や周期に決まりはあるのか?
この記事では、マンションの大規模修繕の周期について調べてみました。
1.周期が決まる要因
結論から申し上げると、大規模修繕には一定の周期・頻度というものが存在します。
しかし、それは全てのマンションに一律に適用されるものではありません。
例えば、
10年
12年〜15年
13年〜16年
25年〜30年
と色々な数字が世の中で言われています。
しかし、重要なことは、世の中に合わせるのではなく、自分のマンションに合った周期で大規模修繕を実施することです。
そのためには、なぜ、上記の周期になるのか、を理解することが重要です。
大規模修繕の周期を決める要因は以下のとおりです。
10年:工事保証
12年〜15年:建築基準法
13年〜16年:国土交通省の調査
25年〜30年:長期修繕計画
これらの内容について、さらに調べていこうと思います。
2.以前は10年周期だった
一般的に10年周期で大規模修繕を行う理由としては、工事の保証年数が長くても10年の場合が多いためと言われています。
他には12年や15年と、より長期的な周期も存在している中、10年周期の場合にはどのような影響があるのでしょうか。
基本的には、区分所有者は損をします。
得をするのは、管理会社および工事業者でしょう。
現在でこそ、12年や15年という大規模修繕の周期が存在していますが、2000年以前は10年周期で大規模修繕の計画をしているマンションが多かったようです。
マンションの寿命は約50年と言われています。
もし、10年周期だったら、計5回。
もし、15年周期だったら、計3回。
1回当たりの工事金額が数千万程度する大規模修繕工事が、2回も少ないということになれば、区分所有者の負担は大分減ります。
ただ、管理会社や工事業者の儲けは減りますが。
その後、10年スパンの大規模修繕工事を行おうとして、一時金や借金をするマンションが問題となり、国土交通省から「12年周期」を推奨するガイドラインが公表されました。
3.12年周期の理由
先ほども書きましたが、大規模修繕工事は「12年周期」で考えられることが多い理由として、建築基準法が挙げられます。
建築基準法では、築後10年(または外壁改修後10年)を経過した外壁がタイル貼りなどのマンションは、3年以内に外壁の「全面打診調査」を行う必要がある、と定められています。
築10年を経過した建物(外装材がタイル張り、石貼り、モルタル塗り)について
・外装改修工事を10年以上行っていない
・外壁全面打診調査を10年以上行っていない
上記に該当する場合、3年以内に外壁の全面打診調査もしくは修繕工事を行う必要がある
(出典:建築基準法 国土交通省通告第282号より)
何故かというと、外壁タイルが落下して、通行人などが負傷などをしないようにするためです。
(通行人に何か大事があれば、工事費用どころの騒ぎではありません。)
全面打診調査を行う期限は、原則として、
築10年(若しくは外壁改修から10年)経過したマンションは、「3年以内」
つまり、
「13年以内」
です。
また、国土交通省が公表しているガイドラインでは「12年程度」が大規模修繕の周期として記載されています。
この建築基準法上の全面打診調査の期限と、ガイドライン上の記載とを合わせて、大規模修繕の「12年周期」の根拠と言われています。
4.15年以上の周期も?
建築基準法や国土交通省のガイドラインを根拠に、大規模修繕は「12年周期」、と言われていますが、本当に12年周期で工事が必要なのでしょうか?
国土交通省のガイドラインでは、
「大規模修繕工事は12年周期で必ず行わなければならない」
ということは記載されていません。
私が自分のマンションの大規模修繕の時に、コンサルタントの方たちに聞いた話では、
15年周期
をオススメされました。
理由は、最近のマンションは性能が良いからだそうです。
実際に、築後20年、30年経過しても、一度も大規模修繕を行っていないマンションもあるそうです。
また、国土交通省による「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」では、大規模修繕の実施時期について、以下のような報告がされています。
・1回目:築13~16年
・2回目:築26~33年
・3回目:築37~45年
この調査結果によると、多くのマンションで13~16年ごとに大規模修繕が行われている傾向が示されています。
5.「30年周期」という考え方
2回目以降の大規模修繕工事では、建物の劣化の程度が1回目と異なるため、大規模修繕の工事内容も変わります。
1回目は、建物外部の防水工事を中心に行われます。
2回目および3回目は、建物外部の防水工事に加え、建物内部の主要な設備や部材の更新などが必要となります。
さらに、築年数が経過すれば、耐震補強工事や省エネ化工事といった、グレードアップのための工事が実施されることがあります。
つまり、築年数が経過するほど、大規模修繕の工事費用は増えていく傾向にあります。
したがって、このような設備更新までを含めた長期的なスパンで大規模修繕の周期を考える方法もあります。
これが長期修繕計画の根拠になっています。
そして、修繕積立金の値上げ計画なども、この長期的なスパンを前提に計画されます。
(ただし、管理会社のお金儲けの道具として使われることもあります。実際に私のマンションでは、何回も長期修繕計画が変わるたびに、修繕積立金の値上げがされてきました。)
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
大規模修繕の頻度・周期および、その要因は以下の通りです。
10年:工事保証
12年〜15年:建築基準法
13年〜16年:国土交通省の調査
25年〜30年:長期修繕計画
国土交通省が公表しているガイドラインですら、「12年周期」が正しい、とは記載されていません。
築後20〜30年経過しても、大規模修繕を一度も行っていないマンションも存在しますので、一律に何年周期で大規模修繕を実施すべき、とは言えないようです。
ただし、確実に言えることは、定期的なメンテナンスを行った方が、修繕費用は抑えられる、ということです。
水漏れなどを放置しておくと、劣化の進行が早く、より多くの改修費用がかかってしまいます。
自分のマンションに合った周期で、定期的な大規模修繕をできるように心がけて下さい。