AIが不動産価格を査定する。そんなことは可能なのでしょうか?また、どれくらい信頼できるのか、どういう使い方をすれば良いのでしょうか?
調べたいけど時間がない………そんな方必見です!
この記事では、AIと不動産価格との関係を、分かりやすく説明します!
時間がない方向けに、シンプル、かつ、的を抑えるように、情報をできる限り圧縮してます。
目次
1.不動産価格の査定にAIが活用される背景
Lalmch / Pixabay
そもそも不動産価格の査定にAIが使われる理由は何でしょうか?
それは、不動産業界の慣習に関係しています。
具体的には、不透明と言われている不動産業界の構造、情報の囲い込みなどの問題が挙げられます。
1-1.情報の非対称性
不動産価格とAIに関連するキーワードは「情報の非対称性」です。
情報を一番必要な購入者が、十分な情報を得られない状況にある。
それが、現在の日本の不動産業界だとも、言われています。
1-2.物件囲い込み問題
囲い込み問題とは、不動産業者1社で売却依頼を受けた物件を独り占めしてしまうことです。
原則、売り物件は「レインズ」という情報システムを通じて、全ての不動産業者に共有されます。
しかし、法律違反を犯してでも、売り物件を自社だけで販売して、仲介手数料を必ずゲットして儲けようとするやり方のことを、囲い込み、と言います。
参考記事:【時間がない人は必見!】仲介手数料の仕組みを理解して、上手に不動産を売る!
1-3.クローズドな不動産情報(レインズ)
不動産業者の共有システムであるレインズには、売り物件が登録され、全ての不動産業者が共有されます。このレインズは売り情報だけでなく、実際に契約になった価格(成約価格)も登録・共有されています。ただし、不動産業界内部での共有にとどまり、一般の個人には開放されていません。そのため、そこに情報量のズレ・不公平が生じます。
参考記事:【時間がない方必見!】不動産価格を検索できるサイトまとめ
でも、世界に同じ不動産はない、と言われているくらい、不動産は個性が強いものだから、A Iの不動産価格って信用できるの?と思われる方もいますよね?
確かに、不動産は個別性が強いので、精緻な価格査定はAIだけでは難しいと思います。ただ、A Iの出す価格はとても役に立ちます。それは、今の日本の不動産業界では、情報が少なすぎるからです。
日本の不動産業界の情報は不透明です。個人には不利な状況です。公平で透明な不動産市場にするために、AIは活用されるべきです。
AIが査定する不動産価格が100%正しいわけではありませんが、情報が少なかった日本の不動産市場にとって、特に個人に対して、役に立ちうる情報なのです。
2.国内の不動産価格推定システム
先程のように、不透明な不動産業界を透明にするために、AI導入の流れは加速しています。
基本情報を入力すれば、過去のビックデータと独自のアルゴリズムで、AIが不動産価格を推定する、というものです。
(使用する時は、このアルゴリズムを可能な限り理解してからにしましょう!)
今のところ、住宅系の価格推定システムがメインです。
以下、各社の特徴などを箇条書きしていきます。
2-1.GEEO
(出典:GEEO HP)
・不動産のプロも使える。
・対象は戸建とマンション。
・基本的な不動産知識が必要。
・価格推定のアルゴリズムは非公開。
・誤差は約8%。(推定価格と実際に売買される価格との誤差)
2-2.家いくら
(出典:家いくら? HP)
・入力作業が簡単で使いやすい。(住所等を入力するだけ。)
・対象はマンションのみ。
・価格推定アルゴリズムは、株式会社DGコミュニケーションズが、1970年代から保有する分譲マンションビッグデータと、マーケティングナレッジに、デジタルガレージグループのナビプラスが有する機械学習技術を採用している、とのこと。
2-3.Howmaスマート不動産売却
(出典:Howmaスマート不動産売却HP)
・対象はマンションと戸建。
・エリアは首都圏中心。
・価格推定は、取引事例・公示地価・時点修正、ほかに不動産価格査定マニュアルや不動産鑑定評価基準をベースにしている。
2-4.マンションAIレポート
(出典:マンションAIレポート HP)
・価格と賃料の相場が確認できる。
・対象エリアは首都圏のうち、1都3県。
・誤差は約5%。(推定価格と実際に売買される価格との誤差)
・場所と間取りと築年数を入力すれば、価格等がレンジで表示されます。
・部屋ごとの推定価格を知りたい場合は、ヤフー不動産とソニー不動産が共同運営している「おうちダイレクト」で可能。
・独自の価格推定アルゴリズム。
2-5.イエシル
(出典:イエシル HP)
・約9,000件の売買履歴からマンション価格を査定。
・対象エリアは、首都圏のうち、1都3県。
他にも、住居系を中心に、価格をAIが推定してくれるサービスはありますが、沢山あって、どれを使えばいいか分からない方もいると思います。
多くのサービスは独自の情報網をベースにされています。
なので、できる限り精度を高めたければ、できるだけ多くのサービスを併用することをオススメします。
不動産業界の不透明な部分を改善するためにAI導入が進んでいます。
一方で、AIによる価格査定のアルゴリズム自体についても、現時点では完全に透明であるとは言い切れないと思います。
(自己責任で使い、自分でも売り情報などを調べましょう。)
3.海外の不動産価格推定システム
不動産情報ポータルサイトでは、有名ところに、Zillow、Redfin(アメリカ)、Zoopla、Rightmove(イギリス)などがある。そのうち、価格推定システムで有名なのはZillowのZestimateです。
(出典:Zillow HP)
Zillowでは、住所を入力すれば、その時点での売却想定額が算出されます。
売却想定額は過去数十年のデータをもとに、エリアの価格推移を考慮して算出されます。また、他には間取りや内装の情報も見れるようです。
想定売却額の正確性については、賛否両論あるようです。
ただ、事実として、データ量が群を抜いているため、不動産売買の際は、まずZillowを確認する、という利用者の傾向があります。
不動産情報ポータルサイトは様々なものが出てきてますが、圧倒的な情報量で利用者が多いのは、アメリカのZillowです。
日本のAI推定価格とも共通しますが、正確性について過度な信頼はせず、あくまで目安として使えば、大変便利なものだと思われます。
4.AI推定価格の活用方法・今後の動向

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これまで記載してきた通り、AIによる推定価格は大いに参考にすべき価格ですが、注意点もあります。
AI推定価格の仕組みを可能な限り理解して使わないと、せっかくの情報が意味のないものになってしまうかもしれません。
以下で、具体的な注意点などを、思いつく限り列挙してみました。
4-1.成約価格の代わりとして使う
日本では、成約価格はプロしか見れません。
しかし、AI推定価格を使おうと思った場合でも、各社独自のアルゴリズムのより算出された推定価格には、成約価格を参考としている可能性があります。
そのため、成約事例に代わる価格として、参考にできる可能性があります。
4-2.データのないイベントに注意
アメリカのZillowなどは将来予測もするようですが、おそらく、今後始めて起こるかもしれないイベントにはAIはまだ対応できないかもしれません。
4-3.公開情報よりも自社で集めた情報のみが使われる可能性
価格査定のアルゴリズムが、各社非開示の状況が多い中、独自情報を元に算定される価格は、果たして信頼できるものか、疑問があります。
4-4.AIを「信頼」してしまうことは危険?
誤差が少ない、と謳っているサイトもありますが、一番重要視すべきデータは、生の物件データであり、今、売りに出ているライバル物件です。少なくとも、ライバル物件の情報は自分で集めた上で、AI推定価格を参考にしましょう。(誤差5〜10%であれば、売出し価格を参考にするのと、あまり変わらないとも考えられます。)
4-5.不動産価格はビックデータよりもピンポイントデータの分析が重要
正確性という観点で言えば、世界に二つとない不動産の特徴を、どこまでAIが推定できるかです。
特にリフォーム状況などは、AI推定価格に反映されているかどうか、注意しましょう。(アメリカのZillowは反映されるようです。)
せっかくAI推定価格が進歩してきているのに、自分でも調べなきゃいけないものか、疑問に思われる方もいらっしゃいますよね。
結論としては、ますます、自分自身で価格を調べる必要性は高まっていくと思います。AIの進歩は、不動産情報の透明化には効果的ですが、最後に価格を決めるのは自分自身という意識が必要です。
AI推定価格は今後より発展し、便利になると思います。
ただ、自分自身で情報を集めなければ、せっかくのAI推定価格も、効果が少なくなりますので注意しましょう。
自分でも相場感を把握することで、よりAIによる価格が活きてくるはずです。