【忙しい方必見!】定期借地権の会計処理とは?

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定期借地権とは何でしょうか。

 

無理矢理、一言で言えば、

 

更新ができない借地権

 

のことです。

 

 

では、会計とは何でしょうか。

 

こちらも一言で言うとすれば、

 

お金の入出金を記録すること

 

です。

 

 

つまり、定期借地権の会計処理とは、定期借地権に関するお金の入出金を記録すること、と言い換えることができます。

 

そして、定期借地権のお金の出入りには何があるでしょうか。

 

まずは、賃料。(地代、と言います。)

 

そして、不動産に関する賃貸借で、契約時に受け渡しされるお金があります。

 

保証金

 

 

権利金

 

です。

 

他にも、名義書換料や条件変更承諾料などのお金のやり取りが行われる場合もありますが、この記事では、上記の3つのお金に関する会計処理について、調べました。

(後ほど、もう一つのお金が出てきます。原状回復義務、または建物取り壊し費用と呼ばれるお金です。)

 

 

1.定期借地権の保証金はどう処理する?

 

 

定期借地権を契約する際、保証金が受け渡しされることがあります。

 

この保証金は、土地を借りた人から、貸した人(地主)に対して支払われます。

 

先ほど、会計処理とは、お金の入出金を記録すること、と言いました。

もう一つ加えると、会社がどの程度、損や得をしているのかを、説明できるようにすることも、会計処理の一つです。

 

ですから、会計処理を理解するためには、処理を行う対象そのものを、良く理解しておく必要があります。

 

保証金を考えてみましょう。

 

先ほど、保証金は契約時に、借りた人から、貸した人(地主)へ支払われる、と言いました。

 

 

では、次に保証金が動くときはいつか?

 

保証金を砕けた言い方にすると、次のように言うことができます。

 

・契約終了時に戻ってくるお金
・賃料等が払われなかった時に没収されるお金

 

ということは、保証金が動く時とは、

 

・契約終了時

・賃料等が払われなかった時
(「等」の中には、定期借地権の契約終了時における建物取壊費用も含まれます。【原状回復義務】)

 

になります。

 

 

以上から、保証金の会計処理は次のようになります。

 

・契約時:入金

 

・差入保証金等として資産計上

 

・契約終了時:出金

 

・万が一、賃料が払われくなりそうになった時:減らす

 

 

会計の専門家から怒られるかもしれませんが、非常に大まかなイメージはこのようなものです。

 

ちなみに、細かく言うと、利息は発生しないことが通常です。
(契約に明記されています。)

 

 

2.定期借地権の賃料と権利金はどう処理する?(前払賃料?)

 

 

定期借地権でいう賃料は、支払った時の出金として記録されます。

 

権利金とは、保証金と同じように、契約締結時に、借地人から地主に対して支払われるお金です。

 

保証金との大きな違いは、契約終了時に、支払った借地人に返還されるかどうか、ということです。

 

保証金は返還されます。
権利金は返還されません。

 

したがって、保証金は課税対象になりませんが、権利金は課税の対象となります。

 

また、ここでは詳しく書きませんが、権利金のように契約締結時に支払ったお金でも、「前払賃料」として認められれば、通常の賃料と同じように、少しずつ費用として計上していくことができます。

(前払費用として資産計上し、期間に対応して費用化する、と専門的には言います。)

 

「前払賃料」として認められるには、契約書に明記するなどの条件がありますが、地主にとってのメリットとしては、税金を軽減できること、将来返さなければならない保証金と異なり、手元資金として使えること、というメリットがあります。

 

 

3.定期借地権に独自の費用「原状回復義務(建物取り壊し費用)」

 

 

定期借地権は、契約終了時に原則として、借主が建物を取り壊して、更地にして、貸主(地主)に返さなければなりません。

 

ですから、借りている人にとっては、契約終了時に、建物取壊しのためのお金が出ていくことになります。

 

では、このお金は保証金と同じく、契約終了時に出金として記録すれば良いのでしょうか?

 

答えは、No、です。

 

ここが、会計処理の難しいところ(私はそう思います)です。

 

 

では、どうするのか?

 

借金として、記録します。
(専門用語では、「債務」と言います。)

 

実際に出金するのは契約終了時ですが、将来、建物取壊費用が発生することが分かっているなら、その時点で記録しておく、ということです。

 

これは、会計が、外部の投資家などに向けて、企業の経営状態を報告するためのものだからです。

 

そして、この定期借地権における建物取壊費用など、将来の発生することが分かっている費用を報告するために計上した債務のことを、専門用語で「資産除去債務」と言います。

 

 

4.資産除去債務として計上したら、次はどうする?

 

 

定期借地権の建物取壊費用は、将来、発生することが分かっているものだから、報告するために、借金(債務)として記録する、と書きました。

 

でも、これで終わらせるわけにはいきません。

 

借金をする、ということはどういうことか。

 

お金が増える、ということです。

 

 

では、入金として記録するのか?

 

答えは、Noです。

 

ここも、会計の難しいところだと、私は思います。

では、一体どうすればいいのか。

 

 

建物の価格にプラスします。
(会計の中での価格を、専門用語で「簿価」と言います。)

 

建物取壊費用を借金として記録した金額を、建物の価格にプラスする?

 

意味分かりますか?
(私は初めて聞いたとき、全く意味が分かりませんでした。)

 

将来の建物取壊費用をプラスされた建物の価格は、当然、増えます。

 

マイナスなんじゃないのか………普通はそう思います。(私もそうでした。)

 

でも、建物価格に建物取壊費用をプラスします。

 

では、マイナスはどうするのか?

 

結論から言うと、「出金を細かく分ける」ために、こういう会計処理がされます。

 

具体的には、建物の毎年の経年劣化として、将来の建物取壊費用はマイナスされていきます。

 

分かりやすいイメージで言うと、借金を毎年少しずつ返していくイメージです。(でも、実際にお金を出金するのは将来です。)

 

 

ここでは、実際の出金と、会計上のマイナスが一致しません。

これが、会計特有の処理です。

 

 

5.会計のそもそもの目的から考える

 

 

もう一度整理します。

 

定期借地権では、契約期間満了時には建物を取壊して更地にして、地主に返却することが基本です。

 

ということは、定期借地権の上に建っている建物は、いずれ取壊されます。

 

いずれ取壊れるのが、分かっているのなら、借金として記録しておこう。

 

借金として記録した金額は、建物価格にプラスして、毎年の経年劣化として、少しずつマイナスしていこう。

 

ここまで、書いてきました。

 

 

では、なぜ、そんなことをするのか、を、考えてみましょう。。

 

なぜ、建物取壊す時に、一度に出金を記録するのではいけないのか。

 

ここは、会計のそもそもの目的から考えるのが理解しやすいと思います。

 

お金を儲けるアイディアを持ってるけど、それを実行するお金がない人、を想像して下さい。

 

そんな人が、お金持ちを説得する時に何て言うでしょうか。

 

「このアイディアだったら、絶対お金儲けできます。儲けたお金は山分けしましょう。だから、お金を出して下さい。」

 

 

お金持ちは、もし、そのアイディアに賛成したら、お金を出します。(専門用語で出資、と言います。)

 

そして、そのアイディアを持っている人は、出してもらったお金で、お金儲けをします。
(専門用語で「事業」と言います。)

 

では、お金持ちは、自分が出したお金が、ちゃんとお金儲けに使われているのか、どうやってチェックするのか。

 

 

そんな時に使われるために生まれたのが、「会計」です。

 

なぜ、チェックが必要なのか。

 

約束は、「儲けたお金」を山分けにすることでしたね。

 

もし、お金を儲けるアイディアを持っている人が、儲けたお金をごまかしたら、どうでしょう。

 

実際よりも少ない金額を、お金持ちに報告します。

 

何が起こるのか。

 

 

山分けする金額が少なくなる。

つまり、お金持ちが貰うお金が少なくなります。

 

詐欺です。

許されません。

 

 

つまり、会計は、お金持ちが、儲けたお金(利益)が正確に報告されるように、チェックされるために使われるものなのです。

 

 

6.利益を正確に報告するため、建物取壊費用は一度には計上しない

 

 

ここで、建物取壊費用の話に戻ります。

 

会計の目的は、お金持ちのために、利益を正確に報告することです。

 

では、もし、建物取壊費用が、取壊しの時に1度に出金として記録されたら、どうでしょう。

 

その計上された期の利益は、ガクンと減りますよね。(場合によっては、赤字になるかもしれません。)

 

建物取壊費用が発生することは、大分前から分かっていることです。

(契約時から分かることです。)

 

大分前から分かっていることなら、少しずつ積立てることも可能ですよね。

 

少しずつの積立なら、利益を大幅に減らすこともありません。

 

また、お金持ちに対しては、将来のために、少しずつ積立ています、と報告したらどうでしょう。

理解を示してくれそうではないですか。

 

つまり、将来発生することが明確な定期借地権の建物取壊費用は、借金(債務)として記録し、毎年少しずつ費用としていく(積立る)ことで、会計の目的である、正確な利益の報告が可能となるのです。

 

 

7.まとめ

 

 

いかがだったでしょうか。

 

定期借地権のお金の流れを通して、会計処理の目的から、それぞれの処理方法を調べてみました。

 

会計のポイントは、「利益の大幅な変動を嫌う」ことです。

 

それを踏まえると、月々の地代よりも、契約締結時の保証金・権利金や前払賃料、または契約終了時の建物取壊し費用の取扱いに、会計独自の考え方が出てくるのも、うなずけます。

 

今回は定期借地権の会計処理を調べましたが、基本的な考え方は、他の不動産関連の会計処理でも通じるところがあると思います。

 

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