不動産の価格の指数には何がある?見方や公表予定は?

不動産情報コラム

それぞれの不動産には価格や賃料があります。

ただ、不動産はそれぞれの個性が強すぎるため、時系列や推移などを自分で調べようと思っても、なかなか難しいのが現実です。

そこで、個性が強い不動産の価格や賃料の全体感を知るツールとして、「指数(インデックス)」というものがあります。

ここでは、不動産の価格や賃料に関する指数には何があるのか。

その指数の作成方法や見方、注意点、公表される頻度などを調べ、まとめています。

 

1.指数とは?

 

1-1.そもそも指数とは?

 

指数とは分かりやすく例えると、

去年を100%としたら、今年は何%

ということです。

 

去年に比べて今年が10%上がっていたら、

110

と表されます。
%はつかないことがほとんどですが、要は%と同じです。

 

ある年や月が、100%として固定されて、他の年などを比べるようになっています。
(ここでは去年を100としましたが、ベースとなるのは去年だけでなく、5年前だったり、10年前だったりします。)

これが指数の考え方です。

指数は英語でINDEX(インデックス)と言われます。

 

 

1-2.指数のメリット

 

指数にすることで、

何%増えたり減ったりしているのか

ということが、パッと分かるようになります。

 

例えば、

去年550円だったものが、今年は605円で売れました

と言われても、

何%上がったのか

ということは計算してみなければ分かりません。(計算してみると10%増えています。)

 

指数にすると、

何%増えているか、という計算が不要

になり、時間が節約されます。

 

 

1-3.指数のデメリット

 

指数は、

いろいろな物をまとめて、一つの数字として

表されます。

 

例えば、消費者物価指数は、いろいろな物の値段をまとめて、全体として比べやすくなっています。

 

逆に言うと、一つ一つの物を比べた時には、全体を表す指数とは違う動きをしていることがあります。

 

指数を使用する時は、その点に注意が必要です。

 

あくまで

指数は全体感を見るもの

ということです。

 

 

2.不動産価格の指数には何がある?

 

 

それでは本題である「不動産価格」の指数には、どのようなものがあるのでしょうか。

公的機関から無料で公表されているものや、企業が有料で提供しているものなど、数多くのものがあります。

ここでは、不動産の実務で良く使用される、無料で使用できる指数をいくつかピックアップしました。

それぞれ目的別、注意点、公表時期などの簡単な説明を加えました。

 

 

2-1 不動産価格指数(住宅価格):国土交通省

 

この指数は世界的に統一された方法で作成されています。
具体的には、欧州の統計局が作成した住宅価格の指数作成のための国際指針に従って作成されています。

 

不動産市場「全体」の指数とするため、分かりやすく言うと、「全ての不動産を同じ品質」と仮定して作成されています。

具体的には、住宅の不動産価格に影響するような「築年数」や「広さ」、「駅からの距離」のなどが、どのくらい不動産価格に影響するのかを仮定します。
(難しく言うと、築年数や広さなどを説明変数とした重回帰分析が行われています。)

 

元データは、国土交通省が実施するアンケート(「不動産取引価格情報提供制度」)が使用されています。ちなみに成約価格の情報です。(いわゆる募集中、売出中の価格ではなく、実際に契約した価格です。)

 

 

こんな人向け

「不動産市場」という大きい視点から、時系列で不動産価格の動きを知りたい人

国際的に不動産市場の動向を比較したい人

買った時に比べて、今は値上がりしているのか、値下がりしているのかを、ザックリ知りたい人

長期的な推移を知りたい人
(東京都は最も古い時点で1984年4月から調べることができます。)

 

 

見方と注意点

 

自宅などの個別の不動産の価格(売却価格など)を知りたい人には向いていません。

オフィスや店舗、工場などの商業用途を調べることはできません。(別で商業用不動産の不動産価格指数が国土交通省から公表されていますので、調べる場合はそちらになります。)

物件ごとの個別の特性が反映されていません。

国や地方公共団体が行った取引はデータから除外されています。

ピンポイントの場所別に調べることは出来ず、あくまで大きな範囲での全体感になります。

元データは実際に契約された成約価格ですが、地下公示などのように、割高または割安なパラメータは補正されていません。そのため、市場が加熱している時などは本来の適正な価格から乖離していることなどが考えられます。

 

 

どんな場所が調べられる?

調べられる場所の単位としては、

全国
ブロック別(北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄)
都市圏別(南関東、名古屋、京阪神)
都道府県別(東京都、愛知県、大阪府)

都道府県は3つしかないですが、ブロックによってカバーされています。

 

 

公表予定は?

毎月
(3ヶ月前の月が月末に更新されます。)

 

 

2-2 不動研住宅価格指数:一般財団法人日本不動産研究所

 

2011年から東京証券取引所が公表してきた「東証住宅価格指数」が2014年12月30日で終了になり、その後、一般財団法人日本不動産研究所が引き継いだものです。
名称も引き継ぎ時に、「不動研住宅価格指数」に変更されました。

 

作成方法は、分かりやすく言うと「同じような」中古マンションが2回売買された時の価格差をもとに指数化されています。

同じ中古マンションではなく、あくまで「同じような」という所に注意です。
例えば、住所や築年数が似ていれば同じような中古マンションと判断されるようですが、リフォームされている場合には除外される場合もあるようです。

 

この作成方法はアメリカの住宅価格指数と同じ作成方法です。(リピート・セールス法)

 

元データは公益財団法人東日本流通機構(東日本レインズ)の中古マンションの成約価格情報です。

レインズとは、不動産会社が利用している不動産情報のネットワークシステムです。

 

 

こんな人向け

 

首都圏の中古マンション市場の値動きを調べたい人

長期的な推移を知りたい人
(1993年から調べられます。)

日本の首都圏とアメリカの住宅市場を比較したい人(作成方法が同じなため、比較の精度は高いと思われます。)

 

見方と注意点

 

首都圏以外の場所は調べられません。

中古マンションの値動きは分かりますが、戸建や土地などは分かりません。

レインズの成約データが元になっていますが、あくまで不動産会社の登録の精度が基礎になっているため、必ず適正な価格が反映されている訳ではない可能性があります。

 

どんな場所が調べられる?

首都圏と首都圏に含まれる4都県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)

 

公表予定は?

毎月
(毎月の最終火曜日に2ヶ月前の指数値が公表されます。)

 

 

2-3 国際不動産価格賃料指数:一般財団法人日本不動産研究所

 

国際的な主要都市のオフィスとマンションの価格と賃料を指数化したものです。

元データは不動産鑑定士による不動産鑑定評価です。

 

 

こんな人向け

 

国際的に精度の高い不動産市場の動向を調べたい人

特にアジアとアメリカ、イギリスとの比較をしたい人

価格だけではなく、賃料についても調べたい人

 

 

 

見方と注意点

 

国際的な価格と賃料に関する貴重なデータですが、ヨーロッパや中東のデータはありません。

年2回の公表のため、細かい変動を知りたい人には向いていません。

 

 

 

どんな場所が調べられる?

 

世界各国の主要14都市
(東京、大阪、ソウル、北京、上海、香港、台北、シンガポール、クアラルンプール、バンコク、ジャカルタ、ホーチミン、ニューヨーク、ロンドン)

 

 

公表予定は?

年2回

 

 

 

2-4 市街地価格指数:一般財団法人日本不動産研究所

 

これまでの指数とは異なり、「土地」価格の指数です。

全国主要198都市の土地を不動産鑑定士による評価額を基に、指数化したものです。

歴史は非常に長く、1936年9月末に旧日本勧業銀行が開始し、その後、日本不動産研究所に引き継がれ、現在まで続いています。

 

 

こんな人向け

 

土地価格の推移を、指数から調べたい人

住宅地や商業地だけでなく、物流施設などの工業地についても調べたい人

土地価格について、精度の高い推移を知りたい人

1936年からのデータのため、長期にわたる価格指数を知りたい人

 

 

 

見方と注意点

 

土地価格の指数のため、建物を含めた市場動向を知りたい人にはピンポイントではありません。
(ただし、建物建築費動向なども織り込まれているため、全く建物の要素が反映されていない訳ではない。)

土地価格の指数であるため、マンション価格の動向とは異なる動きになります。

三大都市圏以外の場所を調べることができません。

 

 

 

どんな場所が調べられる?

全国主要198都市

公表資料で見れるのは

全国
三大都市圏
東京都区部
神奈川県
埼玉県
千葉県
大阪府

 

 

公表予定は?

年2回

 

 

 

2-5 AJFI:ares

 

不動産ファンドのインカムとキャピタルの収益率を表す指数です。

分かりやすく言うと、賃料でいくら儲かるか、転売でいくら儲かるか、ということが分かる指数です。

ただ、あくまで不動産ファンドが購入して、保有し、売却することが前提の指数のため、借入金のよる利回り上昇効果が含まれる指数になっています。(レバレッジ 効果)

 

世界各国の不動産ファンドインデックスで使用されている標準的な方法で作成されているため、国際的な比較が可能です。(修正ディーツ法)特にアメリカで普及しているNCREIFインデックスの作成方法に準拠しています。

基となるデータは不動産鑑定士による鑑定評価額です。
そのため。同じ物件の価格変化が、不動産価格のプロである不動産鑑定士によってモニタリングされており、精度は非常に高い指数だと考えられます。

ただ、不動産ファンドのインデックスということで、場所別や用途別での指数はなく、上場か非上場か、といったファンド目線でのデータ分類になっています。

 

 

こんな人向け

レバレッジ 効果を含む不動産投資の収益率について調べたい人
株式市場などの指標と比較したい人
国際的な不動産ファンドの収益率について比較したい人

 

 

見方と注意点

あくまで大金を投資する不動産ファンド目線の指数のため、一般の方の不動産売買との関連は低いです。
土地価格やマンション価格などを調べたい人には向いていません。
また、場所や用途別に調べることはできません。

 

 

どんな場所が調べられる?

不動産ファンド全体の指数のため、場所別では作成されていません。
ただ、データがどのようなエリア別の割合となっているかは、データで確認することができます。
(東京、名古屋、大阪、福岡など)

 

 

公表予定は?

毎月

 

 

2-6 AJPI:ares

 

不動産ファンドを対象としたAJFIと異なり、AJPIでは不動産を対象として作成されています。
(不動産とは言っても、信託受益権化された不動産も含みます。)
そのため、AJFIで含まれる借入金による利回り上昇効果(レバレッジ 効果)は反映されていません。

また、AJFIと異なり、用途別に確認が可能です。(オフィス、住宅、商業、ホテルなど)

不動産鑑定評価額に基づいて作成されている点や、アメリカのNCREIFインデックスに準拠して作成されている点はAJFIと同じです。

また、公表される指数自体も、賃料を基にしたインカムリターンと、価格に関するキャピタルリターンであり、これもAJFIと同じです。

 

こんな人向け

レバレッジ 効果を含まない不動産単体としての収益率を調べたい人
株式市場などの指標と比較したい人
不動産投資について国際的に比較したい人

 

 

見方と注意点

AJFIと同じく、不動産投資のための指数であるため、土地価格やマンション価格を単純に調べたい人には向いていません。
ただ、AJFIと異なり、各都市別・用途別の平均賃料も公開されていますので、賃貸中の人で、賃料の動向を調べたい人には役立つかもしれません。
(今、家賃は上がっているのか、下がっているのか、など)

 

どんな場所が調べられる?

AJFIとは異なり、場所別に調べることができます。
(東京、名古屋、大阪、福岡など)

 

 

公表予定は?

毎月

 

 

 

2-7 マンション賃料インデックス:アットホーム(株)・(株)三井住友トラスト基礎研究所

アットホーム(株)と(株)三井住友トラスト基礎研究所が共同開発した、マンションの賃料に関する指数です。

基となるデータはアットホームという会社の成約賃料データです。

作成方法は、国交省の不動産価格指数と同じヘドニックアプローチが使われています。

各主要都市別だけでなく、賃貸される部屋の規模別でも作成されています。

 

 

こんな人向け

各都市別、規模別に賃料推移を調べたい人

 

 

見方と注意点

2009年からの指数であり、それ以前はありません。

また、不動産の持つ個別性については、指数作成時に品質調整されていますが、取引の事情や品質調整されなかった個別性などの影響は指数に反映されていません。

(分かりやすく言うと、それぞれの不動産別の分析にダイレクトに使用するのではなく、あくまで全体感を見るための指数ということです。また、成約賃料データが使用されていますが、市場が加熱している時は、その影響を受ける、つまり割高な賃料指数として現れてきます。)

 

 

どんな場所が調べられる?

主要都市(東京23区、東京都下、大阪市、大阪広域、札幌市、仙台市、埼玉東南部、千葉西部、横浜・川崎市、名古屋市、京都市、福岡市)

 

 

公表予定は?

四半期

 

 

3.アメリカなど世界の不動産価格指数には何がある?

 

日本の不動産価格指数は、アメリカやEUの不動産価格指数の作成方法を参考に作成されています。

特にアメリカの不動産価格指数は歴史も古く、一般的に広く普及しています。

アメリカなどの海外の不動産価格指数を調べてみました。

 

3-1 ケース・シラー住宅価格指数(アメリカ)

日本でも良く紹介されるほど、広く普及している指数です。
また、株式市場の指数とも比較ができるように作成されています。
そのため、アメリカでは社会的なインフラとして定着しています。

s&p500などの株価指数と住宅市場を比較が可能です。

 

3-2 NCREIFインデックス(アメリカ)

ニクリフ・インデックスと呼ばれるものです。
不動産の投資成果の指標として、アメリカで最も普及しているものです。

基になるデータは、作成者である全米不動産投資運用業者協議会の会員であるファンドのデータです。(不動産価格はオーナーの時価評価、賃料については成約賃料です。)

1970年代から作成が開始されている、歴史の古いインデックスです。

用途はオフィスビル、集合住宅、商業施設のほか、研究開発施設や倉庫、森林、農地と幅広いです。

 

3-3 IPDインデックス(イギリス)

基になるデータは、不動産鑑定士による鑑定評価データです。賃料についても、成約賃料のデータが基になっています。

用途はオフィスビル、商業施設、工業施設です。
各用途に応じて、規模による分類がされています。

 

 

 

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