昔、昭和時代の不動産屋は、不動産のことを、
土地建物
とか、
宅地建物
と言っていたらしいです。
不動産とは、土地とその定着物、という民法上の規定はありますが、
実質は、土地と建物のことです。
では、不動産価格とは何か。
土地価格と建物価格の合計のことを不動産価格と呼べます。
マンションの場合は、部屋1室の価格、というイメージがありますが、ちゃんと土地と建物に分けられます。
(理論上の数値になりますが。)
よく巷では、
今後の不動産価格は上昇する
とか、
不動産価格には波がある
とか、
不動産価格は景気の影響を受ける
とか、不動産価格に関して誤った理解をされているのを良く目にします。
土地と建物は、価格の推移が違います。
マンションなどの区分所有建物についても、価格の推移は違います。
土地、建物、マンションなどは、それぞれが違った価格の推移をしますが、その中でも、全ての要素が織り込まれた価格があります。
それは何か、というと、土地価格です。(地価、とも言います。)
地価は、建物価格の変動や、マンション価格の変動、さらに景気の変動などの社会経済情勢などのあらゆる要素が織り込まれた価格です。
つまり、
地価の推移は不動産価格の推移を表す
といっても良いと思います。
土地は、土地の上に建物を建てることにより利用されます。
土地上の建物次第で、その価格水準は変わります。
一方、建物の価格は時の経過により、少しずつ下がっていくのが通常です。
(経年減価、といわれるものです。)
企業会計や税金の世界では、減価償却費という建物の経年減価相当額を、費用として計上できます。
そうすることで、税金算出のもととなる課税標準を減らすことができるため、節税効果がある、と言われています。
では、土地はどうか?
というと、
土地は減価償却の対象とはされていません。
つまり、時の経過によって、土地価格は下がっていくわけではない、ということです。
このように、土地価格と建物価格は、全く違う価格の推移をすることが分かります。
不動産価格が上昇する
というのは、建物価格が上昇するわけではなく、厳密には土地価格が上昇しているわけです。
(もちろん、希少価値が高い建物などであれば、建物の「市場」価格が上昇することは考えられます。)
マンションの価格についても、建物価格は減価償却されていきます。しかし、一般的には、マンションは部屋単位で「市場」価格が上がったり、下がったりします。
それは、景気の良い悪いは当然として、新築マンション市場の動向や、中古マンション市場の動向などが、相互に影響しあい、決まっていくものです。
世間で「不動産価格」と使われているのは、
例えばマンションでいうところの「市場価格」の意味で使われている、と考えれば分かりやすいです。
では、東京タワーや大阪城などの特殊な建物の価格はどうなのか。
大阪城などは、時の経過で価値が減っていくと考えれば、ゼロ円なのか、という疑問が考えられます。
このような特殊な建物は、経年減価はしないと考えられており、その価格はコストがメインとなる、という趣旨の評価方法が不動産鑑定評価基準という基準に規定されています。
市場価格、ではなく、コストが建物価格、という考え方です。新築建物などは、建築費用そのものが市場価格とも考えられますが、観点としては同じです。
ただし、文化財などの特殊な建物は建築コストではなく、維持管理コストが建物の経済価値、と考えられています。
以上、いろいろと不動産の構成要素の価格の推移について考えてみましたが、結局のところ、土地価格と建物価格は違う、ということです。
しかし、土地価格(地価)には、建物を含む様々な要素が凝縮されている、ということは重要です。このポイントをおさえるだけで、不動産価格を見る目が変わります。
地価の推移は不動産価格の推移を表す
ということがポイントです。
最後に、一つ重要な点として、
建物価格は場所による影響があまりなく(建築資材の価格は資材そのものの価格ですので、場所による影響は受けません。)
一方、土地価格は場所による影響を非常に強く受けるものです。
このような点を踏まえると、土地建物の不動産価格のうち、土地価格の比率が低ければ、不動産全体の経年減価は大きく、反対に土地価格の比率が高ければ、景気等による価格に対する影響が価格に大きく反映する、ということなんです。
土地をお持ちの方は、その使い方、処分方法には、十分すぎるほどの注意をすべきでしょう。
土地価格を正確に算出するのは非常に高度な知識と経験が必要となります。