将来の不動産価格を予測することはできるのか?
私は、不動産価格のプロである不動産鑑定士や、不動産投資のプロと方々とお話しをする機会が多いのですが、不動産価格の予測は非常に難しいのだと、感じております。
まさに、
1年先のことを言えば、鬼が笑う
というコトワザがしっくりきます。
例えば、アメリカの不動産価格を可視化するサイトでは、Zillowというサイトが有名で、将来の不動産価格を予測してくれるそうです。
また、インターネットで検索してみると、様々な不動産売買関連のサイトで、
来年は不動産価格が下がるから今が買い時!
とか、
オリンピックまでは不動産価格は上昇傾向が続く
とか、様々な予測がされています。
しかし、先ほども言ったように、不動産価格の将来予測は、不動産鑑定士でも非常に難しい、と言っているくらいです。
現にどうでしょうか。
オリンピック、そして、その後は大阪万博、リニアモーターカー開通やインバウンド旅行者の急増などなど、不動産価格が上昇する要因としては数多かったものの、新型コロナウィルスの世界的大流行で、不動産市場の先行きも不透明な状況です。
では、一切、将来の不動産価格についての予想はできないのでしょうか。
例えば、不動産価格には波があると言われていますが、価格高騰期を避け、価格が底に近い時に自宅を購入したり、不動産投資を行なったりすることは不可能なのでしょうか。
実際、投資不動産を安く仕入れて、賃貸の状況を好転させてから、高く売却してキャピタルゲインを得る、というやり方があります。
バリューアド型投資と呼ばれる方法ですが、私がよくお話しする方だと、IRRで20%近い成果を出していることもザラにあります。
本当に基本的なことになりますが、
より確実な情報に基づけば、将来の不動産価格の予想は可能ですし、不動産投資のプロたちも、その方法で高い投資実績を上げています。
例えば、段階的に賃料が増額改定されるスライド賃料だったり、長期間に渡り安定的なキャッシュフローが期待できる定期建物賃貸借契約などに基づく場合は、精度が高い予想が可能です。
また、オリンピックや大阪万博などもそうですが、インバウンド旅行者の誘致などの行政的な施策についても、実は精度の高い予想を可能とする材料となります。
インバウンドなどは、ある一定の外国人旅行者の増加を目指して、継続的に国などが支援策などを打ち出していきます。
目標の達成の程度は、その時々の景気の影響は受けますが、トレンドとしては、精度が高い予想が可能だと思います。
しかし、本当に気をつけて頂きたいのは、中途半端な根拠に基づく、不動産価格の将来予想です。
「来年は………」
とか、
「◯◯年までは………」
などという言い方をしているサイトは、まず疑ってかかるべきです。
不動産価格の将来予想は、高度な知識と豊富な経験を持ったプロたちであっても、そうそう簡単にはできないことなんです。
不動産会社が運営しているサイトなどで行われている不動産価格の予想については、鵜呑みにせずに、全く信じないか、もしくは出典元を当たるなど、自分で調べてみるくらいのことはした方が良いと思います。
(自分の身は、自分で守るためです。)
とは言え、不動産投資のプロの方々が指標としているものの中に、不動産の素人の方でも使えるものがあります。
それは、
人
です。
残念ながら、というか、やはり、不動産価格は人口や人の流れ、量に比例するようです。
裏を返せば、新型コロナウィルスの蔓延により、長距離移動が不可能な状態が定常化した場合、どのような影響が不動産価格にあるのか、が人の流れを読めば、ある程度、予想できそうです。
とは言え、テレワークの普及などで、それが即、オフィス需要の下落、すなわち、オフィスビルなどの投資用不動産の価格暴落につながるか、と言えば、それは短絡的な見方だと思います。
人の流れとともに、世の中の流れも重要です。
不動産は近年、伝統的な株式や国債などの投資商品に代わり、世界中の年金基金などから投資対象として認められています。
テレワーク普及、オフィス需要なくなる、オフィスビルの価格暴落、という流れを、
ハイそうですか、
と黙って見ているほど、世界中の機関投資家たちは甘くありません。
コワーキングスペースやサテライトオフィス、ソーシャルディスタンスを確保し、快適性を向上させたオフィスなどなど、いろいろな手で対策を練ってくるのは必至です。
将来の不動産価格の予想は、非常に、非常に、難しいことです。