管理規約、というのはマンションを買ったことがある人は当然ご存知ですよね?
では、この管理規約に「標準的」なものがあることはご存知ですか?
この記事では、標準的な管理規約、すなわち、「マンション標準管理規約」について、内容のポイントとこれまでの経緯を中心に説明しています。
マンションの理事を初めてする人なんかは、自分は素人だから、基本的には管理会社さんにお任せしよう、なんて思ったりしていませんか?
これ、思っているだけでもちょっと良くないのですが、ましてや管理会社に、「お任せします」なんて言っていようものなら………最悪です。
管理会社にナメられ、カモにされます。
その結果、月々の管理費と修繕積立金の負担が大きくなり、家計を圧迫するほか、売却する時も買い叩かれるのがオチです。
自分の身は自分で守りましょう。
目標は、ポイントを押さえた、管理の素人ならではの理論武装です!
目次
1.必ず標準管理規約通りにしなければならない訳ではない
「マンション標準管理規約」とは、一言で言えば、管理規約のお手本のことです。
そもそも、管理規約とは何かというと、マンションの住民が生活していく上でのルールです。
過去、このルールが問題となり、トラブルが起きたことなどを踏まえて、国が、お手本となるルールを公表しているのです。
(昔は建設省、今は国土交通省です。)
あくまで、「お手本」なので、絶対にその通りにしなければいけない訳ではありません。
つまり、法律的な強制力はありません。
2.マンション標準管理規約は改正され続けている
先程、トラブルなどが起きたりすると、それを踏まえて、国がマンション標準管理規約を公表していると言いました。
では実際、いつ、どのように公表されてきたのか。
最も古くは、1982年(昭和57年、昭和です。)に建設省が発表しました。
簡単な内容としては、マンションの特徴を文章にした、というイメージです。
(区分所有とは?専有部分とは?管理組合会計とは?……といったイメージです。)
名前も当時は「中高層共同住宅標準管理規約」と言いました。
次は、1997年(平成9年)です。
この頃、分譲マンションの数が急上昇してきたため、それに合わせるように、大きな改正がされました。
注目すべきは、大規模修繕のための「長期修繕計画」を管理組合が作るべきだと定められた点です。
(その他、リフォームの際の手続きや、団地や1階がお店のマンションなどに合わせた規約も作成されました。)
その後、2001年(平成13年)に名前を「マンション標準管理規約」に変え、さらに時代の流れに合わせるよう、2016年(平成28年)、2017年(平成29年)に改正されています。
3.最近の改正ポイントを知ってマンション管理の流れを知りましょう
これまで、昭和の時代から、時代の流れに合わせて、マンション標準管理規約は改正され続けてきました。
では、最近の改正では、一体何が変わったのでしょうか?
大事な点を、大まかに知っておけば、管理組合での仕事に、きっと役に立ちます。
3-1.2016年の改正は「新しい!」感じです
3-1-1.住んでない人が管理組合役員になる
今まで、マンション管理士や一級建築士など、専門家に相談してきたマンションもあります。
これからは、相談という形だけでなく、この専門家たちも、マンションの管理組合の一員として、より積極的に管理に参加できるようになりました。
3-1-2.議決権が1部屋1票じゃなくなるかもしれない
新築マンションに限った話で、必ずしもそうなる訳ではありませんが、1部屋1票というのが当たり前だった議決権が、その部屋の価格などの価値によって、その票数を変えることができるようになりました。
3-2.2017年の改正は「要注目!」です
2017年の改正のキーワードは、
「民泊」
です。
日本の外国人旅行者が増え続けていることはご存知でしょうか?
その増え方にホテルが追いつかなくて、一般家庭をホテル代わりにする民泊が増えました。
この民泊は、ビジネスとして成長していくのと同時に、静かなマンションに騒音をもたらすといった、マイナスの側面があります。
そんな民泊を自分のマンションで禁止にする場合のサンプル文章が記載されています。
4.強制力がないなら無視してもいいの?
4-1.強行規定と任意規定
先程、マンション標準管理規約はあくまでお手本、参考であって、法律的な強制ではない、と言いました。
だからといって、好き勝手なことを管理規約に書いてよい訳ではありません。
なぜなら、いかによっても、法律には違反できないからです。
この法律違反になってしまうような部分を、「強行規定」といい、ある程度自由に変更できるところを「任意規定」と言います。
強行規定の具体例です。
②管理所有者による重大変更行為の禁止
③規約の設定・変更・廃止に関する決議要件
④集会招集請求権の定数を増加させること
⑤特別決議事項について、招集通知に通知されていない場合は決議できないこと
⑥管理組合法人の設立・解散決議
⑦義務違反者に対する訴訟提起の決議要件
⑧建物価格2分の1を超える部分の滅失の場合の復旧決議の要件
⑨建替え決議の要件
⑩団地内の建物の建替え承認決議の要件及びこの場合における各団地建物所有者の議決権の割合
⑪団地内の建物の一括建替えの要件、及びこの場合における各区分所有者の議決権の割合
4-2.絶対的規約事項と相対的規約事項
また、マンション標準管理規約が参考だから、ウチのマンションでは書かなくていい、ということも、認められる場合と、認められない場合があります。
つまり、管理規約に絶対に書いておかなければならないことと、別に書かなくてもいいものがあります。
絶対に書いておかなければならないものを「絶対的規約事項」といい、別に書かなくてもいいものを「相対的規約事項」と言います。
それぞれの具体例です。
①規約共用部分に関する定め
②規約敷地に関する定め
③専有部分と敷地利用権の分離処分を認める定め
④敷地利用権の割合の定め
⑤共用部分の持分割合に関する定め
⑥共用部分の重大変更に関する区分所有者の決議定数を減ずる定め
⑦共用部分の管理に関する決議方法
⑧共用部分の負担割合及び利益穐主割合の定め
⑨一部共用部分の管理の定め
⑩管理所有に関する定め
⑪管理者の選任・解任方法に関する定め
⑫集会の招集請求権者・招集請求の定数を減する定め
⑬集会の招集通知期間の伸縮及び掲示の定め
⑭通知事項以外の事項に関する集会決議の定め
⑮議決権の割合及び普通決議の定数の変更の定め
⑯管理組合法人の理事・監事の選任・解任・任期・定員に関する定め
①先取り特権の目的となる債権の範囲の定め
②管理者の訴訟追行に関する定め
③建物及び敷地ならびに付属施設の管理・使用に関する定め
④集会の議長に関する定め
⑤管理者が存在しない場合の規約・議事録の保管者の定め
4-3.守らなければならないことは、最低限チェック!
マンション標準管理規約は確かに法律的な強制力はないものです。
ただ、他の法律などによって縛られる部分はありますので注意しましょう。
逆に自分のマンションが標準管理規約と大分異なっている場合は(そんなことも珍しいのですが……)、法律違反等をしていないかどうか、その部分だけは要チェックです。
5.マンション標準管理規約はあくまで「参考」ですが………
最初にも言いましたが、マンション標準管理規約はあくまでお手本であって、必ずしも強制されるものではありません。
ただ、だからと言って全て無視していいものではなく、他の法律には従わなければなりません。
そして、何よりも、マンション標準管理規約は時代の流れに応じて、トラブルを改善するためなどの目的で、改正されています。
ですから、むしろ、マンション標準管理規約通りの管理規約にしておけば、特に目立った害はありません。
(過去に一部害のある改正がされたことがありましたが、今では直されています。)
6.改正のポイントを抑えて管理組合の運営を効率的に!
マンション標準管理規約はこれまで、時代の流れやマンションの変化に合わせて改正されてきました。
そして、これからも、何らかのトラブルを改善するなどの目的で、改正がされていくはずです。
マンションの管理組合役員になった場合、細かい内容は覚える必要はありませんが、何故、その改正がなされたのか、というポイントは押さえましょう。
そうすることで、今、管理組合の役員である自分たちが何をすべきなのか、マンション標準管理規約がきっと教えてくれるはずです。