機械式駐車場は、マンションや事務所ビルなどで設置されています。
機械式駐車場は1種類ではなく、収容台数や動作方法によって数種類あります。
そして、それぞれ異なるメリットおよびデメリットがあります。
この記事では、機械式駐車場の種類と、メリットおよびデメリットについてまとめました。
目次
1.そもそも機械式駐車場とは?
そもそも機械式駐車場とは何でしょうか。
この「機械式」とは、
駐車場所までの移動を機械で行う
という意味です。
自分で駐車場所まで走行する場合は、
「自走式」
の駐車場と言います。
機械式駐車場は、都心のような限られた土地においても、駐車台数を増やすことができるため、昭和50年代頃から、居住用のマンションでも機械式駐車場が利用され始めています。
そして、現在では主に商業地等を含む都市圏を中心に利用されています。
2.機械式駐車場の種類は大きく2種類ある
機械式駐車場の種類は、以下の大きく2種類あります。
・上下にのみ動くタイプ
・上下左右に動くタイプ
そして、上下左右に動くタイプは収容台数や使い勝手は良いのですが、上下にのみ動くタイプに比べて、メンテナンス費用が嵩むというデメリットがあります。
また、それぞれのタイプには、地上や地下、構造に応じて以下のものがあります。
【上下にのみ動くタイプ】
・地上二段式
・ピット二段式
【上下左右に動くタイプ】
・昇降横行式
・垂直循環方式
・エレベーター方式
3.地上二段式
車を上下に2台とめるタイプの機械式駐車場です。
地上二段式は一般住宅に多く採用されているタイプです。
パレットと呼ばれる車載台が昇降することで、それぞれの車を取り出します。
(画像出典:「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き・国土交通省)
【メリット】
・下段は上段パレットにより雨や日光を遮ることができます。
・上段は地上から高い位置にあるため、下段よりも防犯性に優れています。
・敷地面積の有効活用ができます。
【デメリット】
・平面式の駐車場に比べて、上段のパレットは車の出し入れに時間がかかります。
4.ピット二段式
ピット二段式とは、地下構造を有する装置のことです。
車を上下に格納するという点では地上二段式と同じですが、下段パレットが地下部分となる点で違いがあります。
ピットを大きくすると、三段式にすることも可能です。
(画像出典:「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き・国土交通省)
【メリット】
・下段は地下部分に格納されるため、上段パレットにより雨や日光を遮ることができます。
・下段は地下部分に格納されるため、上段よりも防犯性に優れています。
・敷地面積の有効活用ができます。
【デメリット】
・地下部分は、大雨等による浸水被害が発生する可能性があります。(特に三段式の場合。)
・平面式の駐車場に比べて、上段のパレットは車の出し入れに時間がかかります。(特に三段式の最下段。)
5.昇降横行式
入出庫用の一台分の空きパレットを利用し、各パレットが上下左右に動くことで、指定のパレットを呼び出すタイプの駐車場です。
3段以上することも可能です。
また地下構造にする場合と、地上部分で三段式にする場合のどちらもあります。
(画像出典:「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き・国土交通省)
【メリット】
・上段は地上から高い位置にあるため、下段よりも防犯性に優れています。
・地下部分に格納されるため、上段パレットにより雨や日光を遮ることができます。
【デメリット】
・呼び出し時の車の位置によっては、入出庫に時間にばらつきがあります。
・地下部分は、大雨等による浸水被害が発生する可能性があります。
6.垂直循環方式
パレットを垂直方向に循環して動作させることにより、入出庫位置までパレットを呼び出すタイプの駐車場です。
1階部分に入出庫部分が設置されているケースが多いです。
(画像出典:「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き・国土交通省)
【メリット】
・格納される全てのパレットへの侵入が困難なため、防犯性に優れます。
・全ての車が外壁等により格納されるため、雨風や日光等による劣化等を防ぐ効果があります。
・エレベーター方式に比べると、メンテナンスが容易で、費用もかかりません。
【デメリット】
・呼び出し時の車の位置によっては、入出庫時間にばらつきがあります。
・大型装置のため、作動音・振動音が発生します。
7.エレベーター方式
上下左右に配置されたパレットを、上下左右に動作させることにより、車を入出庫させるタイプの駐車場です。
(画像出典:「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き・国土交通省)
【メリット】
・格納される全てのパレットへの侵入が困難なため、防犯性に優れます。
・垂直循環方式に比べると、騒音の程度が小さいです。
【デメリット】
・呼び出し時の車の位置によっては、入出庫時間にばらつきがあります。
・垂直循環方式に比べると、メンテナンス費用がかかります。
8.機械式駐車場の耐用年数は?
機械式駐車場のタイプや、使用頻度、維持管理の状態等により異なります。
国土交通省の「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」によると、駐車装置は20~25年程度で取替え、昇降装置は10年程度、安全装置は5年程度で修繕・取替え、排水ポンプは10年程度で取替え、という目安が記載されているます。
この他に、パレットや支柱等の鉄部塗装も必要です。
9.機械式駐車場に法定点検はある?
機械式駐車場には、法律で定められた定期検査等の義務はあるのでしょうか。
エレベーターは建築基準法により定期検査が義務付けられています。
一方で、機械式駐車装置には法的な点検義務がありません。
しかし、人身事故等が過去に発生しているように、使用に際して危険を伴う機械装置であることは確かです。
したがって、法律で定められていはいなくても、定期的な保守点検が不可欠と言えます。
また、機械式駐車場に使用されている部品等は種類が多く、また耐用年数にもばらつきあるため、適切な維持管理を行わないと故障の原因となります。
10.機械式駐車場のマンションを選ぶ際の注意点
機械式駐車場は、上記のようにタイプによってメリット・デメリットが大きく異なります。
また、マンションによっては、全戸数分の台数がない場合もあります。
したがって、マンション購入の際には、以下のようなポイントについて、事前に確認しておくことをお薦めします。
・駐車位置のメリット・デメリットに即した駐車料金設定となっているか
・駐車場のメンテナンス費用および体制は適切か
・自分の所有する車が格納できるサイズかどうか
・近隣に貸駐車場があるか
・機械式駐車場の長期修繕計画
・現状の稼働率
・過去に人身事故が発生したことがあるか
・ゲリラ豪雨が発生しやすい地域かどうか